マーケットのミカタ アメリカのインフレと揺れる株式市場
2022.06.28 (火)
アメリカのインフレと揺れる株式市場
アメリカの物価上昇は加速していました
6月10日に、5月のアメリカの消費者物価指数(CPI)が発表されました。CPIは消費者が物やサービスに支払った価格を指数化したもので、その上昇率はインフレ率を示しています。まずはCPIのグラフを見てみましょう。
5月のCPIは前月比で+1.0%(市場予想は+0.75%)、前年同月比で+8.6%(市場予想は+8.2%)でした。市場ではインフレに減速の兆しが出ることが期待されていましたが、グラフからも分かるようにインフレがさらに加速していたことが示されました。
FRBは想定以上のインフレを受けて金融引き締めを加速しました
6月の14日と15日に、アメリカの金融政策の方針を決める会議、FOMC(連邦公開市場委員会)が開かれました。6月は政策金利を0.5%引き上げることが予定されていましたが、想定以上に加速するインフレを受けて急遽0.75%の利上げをすると発表されました。ここで、アメリカの政策金利(FFレート)の推移を見てみましょう。
グラフを見ると、2020年3月のコロナショック以降は大幅な利下げをしていましたが、今年に入ってから政策金利は段階的かつ急速に引き上げられていることが分かります。また、グラフ上の赤い点と線はFOMCのメンバーが予想している将来の各時点での政策金利を示しています。FOMCのメンバーの予想中央値は、2022年末に3.375%、2023年末に3.75%、2024年末に3.375%、長期目標は2.5%となっています。この数値は前回の予想を大きく上回っており、FOMCのメンバーの多くが金融引き締めを加速した方が良いと考えを改めたことが読み取れます。
また、政策金利は今後も段階的に引き上げられる見通しですが、いつまでにどの程度引き上げるかは、今後のインフレや景気の状況によって変わります。インフレが減速しない場合には大幅な利上げが求められますが、過度な利上げは景気を悪くして経済の衰退を招く恐れがあります。アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、現在非常に難しい選択を迫られています。
今後の日本株とアメリカ株の見通し
最後に、日本とアメリカの株価の推移を見てみましょう。
グラフ上の黒い線で囲った部分を見ると、2021年はアメリカ株の方が日本株より顕著に上昇していたことが分かります。またグラフ上の赤い線で囲った部分を見ると、今年に入ってからは日本株の方がアメリカ株より堅調に推移していることが分かります。
近年はアメリカ株の方が日本株より堅調な状況が続いていましたが、円安や日本株の割安さなどを踏まえると、日本株が優位な展開が今後も続く可能性があります。
- 当記事は、アイザワ証券のラップサービスの一つ「スーパーブルーラップ」のファンドマネージャーである三井郁男が作成したレポートを、添田恭平が再構成したものです。
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