かぶかはふしぎでうごいてる??? 第3回 株価と会社をつなぐもの
2022.01.17 (月)
発明したよ。それで?
株価の評価方法はいくつもあり、これが絶対というものはありません。また、評価方法の使い方についても様々なものがあり、これも絶対というものはありません。
もし、すべての人が信じることの出来るような株価評価方法の決定版が現れたとしましょう。現在の株価がその決定版の示す株価よりも安ければ皆が買うことなり、高ければ皆が売ることになるでしょう。瞬間で株価は決定版の示す株価に収束し、その後、株価は動かなくなってしまいます。そんなことはあり得ません。
もし、どこかで誰かが自分だけが知っているスペシャルな株価算定方法を発明したとしましょう。自分だけが知っていても他の誰も知らなければ、そのスペシャルな株価算定方法で算出した株価を参考に売買を行う人はいません。スペシャル投資家は自分の発明について悩み続けることになるでしょう。
世の中に溢れかえっている「特選版、だれでも出来る株価の・・・・・」のようなもの。なぜ、そのような秘密のノウハウを皆に無料もしくは数千円で伝授するのでしょうか?答えは何となく見えてきますね。他の理由としては、自己承認欲求を満たすためと言ったところでしょうか。
導入部分で伝えたいことは、株価は社会現象であり、数学のような公式は存在しないということです。この先に書いてあることも、鵜呑みにせず、どこが栄養で、どこが毒か考えながら読んでいただければと思います。
素晴らしい会社!株価も素晴らしい値段に
2020年の春ごろから「巣ごもり関連」として、様々な企業の株価が大きく値上がりしました。その前は「5G関連」の企業、「新興国関連」などもありました。これらの背景には、その関連テーマに準じた商品・サービスの売り上げが拡大することで、企業の利益が増加することが期待できたからです。
仮定の話として、ある企業Aの発売したゲームが大ヒットしたとしましょう。企業Aの株価は上昇を続けました。登録利用者数が増加傾向の一途を辿り、株価もそれに合わせて上昇の一途を辿りました。さて、この上昇を続けている銘柄の株式を何円までなら購入してもよいのでしょう。株価が上がっているから買えるのなら、下がりだしたら売るのでしょうか。出来るなら、どれぐらいまでなら適正なのか、目途をつけたいところです。
株価は企業を表すものであり、企業の良し悪しは利益に現れるものです。ここでの利益は現在の利益だけではなく、将来発生しそうな利益のことになります。現状では赤字の企業であっても、将来大きな利益を得る可能性の高い企業では、その将来利益に値する株価が形成されることに異論はないと思います。考えるべきことはその可能性がどれぐらいであるかという点です。
トラッドだけど使い勝手の良いPER
この指標を導入することによって、株価と企業の利益が繋がります。PER10倍の企業Xと20倍の企業Yでは、前者の企業の方が利益に対して株価が安く評価されていると考えます。一般的にはPERの低い方が株価は割安と判断されます。
では、PER10倍の企業Xに投資すれば、少なくともPER20倍の企業Yよりは収益獲得可能性が高いかと言えば、そうでもない所が難しいところです。前章で株価は将来の利益に応じて動くものだと記載しました。この例に過程を追加します。企業Xは主力商品が販売不振となっており、数年後には利益が半分になる可能性が高いとします。一方、企業Yは安定成長企業で数年後には利益が3割増加しそうだとします。
割高・割安銘柄が入れ替わってしまいます。これが、将来利益を基にして考えるという例になります。
次に可能性の高低についての検討になります。企業①、②ともに株価は1000円、現在の利益は100円、5年前の利益は50円になっていたとします。この場合には、現在の利益から算出されたPERは両社とも10倍(1000÷100)となります。しかし、これまでの5年間の利益推移が下表のようになっていたとします。
どちらの企業に魅力を感じるでしょうか。多くの人は企業①を選択すると思います。企業①は、この先も安定的に利益が増加することが期待でき、かつ、想定される利益額が生じる可能性が高いと思われるからです。一方、企業②は利益の出方が荒く、先の業績についても予想がつきにくい会社です。これが、将来利益の可能性についての考え方のひとつです。
古くからあり、多くの人が使っているPER。白いBDシャツのようなものかもしれません。だけど、着こなしによってはダサくもオサレにもなる。PERも同じように使い方次第であることを覚えておいてください。
おねがい教えて!魔女っ娘先生
損益計算書上では「親会社株主に帰属する純利益」が最終利益に該当します。発行済み株式数も会社が開示しています。ただ、細かい調整もあるため、いろんな媒体で示されている一株当たり利益を使っても齟齬はないです。ただ、PERの計算では今期の予想利益を使用するため、損益計算書の利益は利用しません。これは最優先事項です。
また、参考となる数値としては、同業他社の数値やマーケットの平均値(現在の東証1部では15倍程度、日経新聞のマーケットデータ欄に毎日記載されています)などと比較することも可能です。ただ、企業によってPERの水準は大きく異なるため、業界ごとの水準を把握することをお勧めします。これは最優先事項です。
株主が企業に投資したお金に対して、企業がどれだけの利益を上げているかを示すもの。数値が高いほど効率の良い経営をしているとする経営指標。この指標も業界ごとに数値のレベルが異なるため横比較が必要です。しかし、これは経営指標であり株価評価指標(式の中に株価が存在しません)でないことには注意が必要です。これは最優先事項です。
執筆後記
第3回目はバリュエーションについて記載しました。企業の財務数値と株価の関係を示す指標のことです。これを利用することで、株価と企業が繋がります。そして、株価の理解が進展します。いろんな株価チャートを研究しても「なんだかなぁ」。企業の研究をしてみても「なんだかなぁ」。そのような思いを感じている方にお勧めするのがバリュエーションについて研究することです。
新キャラ(魔女っ娘先生)を導入してテコ入れを図りました。筆者の狙いを理解して下さった方はいらっしゃるでしょうか。定石であれば海水浴編や温泉編を入れたいところですが、流石にそれはムリですね。これに懲りずに、また読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。