かぶかはふしぎでうごいてる??? 第1回 投資環境が悪いのに株価が上昇している・・・・・
2021.11.15 (月)
ちょっと長めのプロローグ(詳しい方は読み飛ばしてください)
まず、「投資環境」とはどのようなものを指すのでしょうか。「景気動向」「金利動向」「為替動向」「政治・政策動向」「海外の状況」などなど。よく見かける投資環境の解説は前記のようなものを説明した後に、「日本の株式市場は〇〇を△△し、TOPIXの動きは××となりました」とまとめることが定石です。これは、株式市場全体の動きをTOPIX(もしくは日経平均株価指数)で表すことが出来るとして、投資環境の状況を織り込む(※このワードについては後述しますが、このワードを覚えておいてください)動きが生じたと解説しています。
「織り込む」の説明をする前に、TOPIXや日経平均株価指数について説明します。TOPIXは東証1部の全銘柄を対象に、日経平均株価指数は日本を代表する225銘柄を対象に、それぞれの計算法によってTOPIXなら2000.15ポイント、日経平均株価指数なら30000.15円のような数値を算出しています。どちらの指数にしても、ベースとなるのはその指数を構成している企業の株価です。なので、個別企業の株価がどのように動いているのかを考えることが必要になります。
話を単純化するために個別企業の株価は企業の業績(利益)に左右されると部分が大きいとします。これは、企業の目的が利益を上げることにあるため、直感的に受け入れやすい前提だと思われます。話を戻すと、企業業績に影響を与えるものを「投資環境」と呼んでいます。
「景気動向」が良くなると企業は商品・サービスが売れるため利益が増加します。「金利動向」が低下すると、借入金の多い企業では金利負担が減りますし、投資意欲の強い企業は投資資金を低金利で調達できます。輸出型の企業では「為替動向」が円安になると海外販売分の売り上げが円に換算したときに増加します。「政治・政策動向」は給付金が出ると消費の下支えになり、商品・サービスの売上減がカバーされ利益の落ち込みが減少します。「海外の状況」は輸出による成長を志向する企業が多い我が国企業では、直接売り上げを左右します。例をあげることで「投資環境」と企業の利益の関係を解説してみました。
やっと本題です(ふしぎは解消されるでしょうか?)
では、今回のテーマである「投資環境が悪いのに株価が上昇している」状況が生じた時をどのように理解するかに進みます。これには前述した「織り込む」の考え方を理解することが必要です。これに関しても例をあげて説明します。
記憶に新しいところで考えれば、昨年のコロナ禍において株式が上昇したところが思い起こされます。あの時は経済活動が失速し、一部の企業を除けば売上が減少、利益が急減しました。先ほどの議論で考えれば、企業業績が落ち込んでいるときに株価が上昇するのは話が違うじゃないかとなります。これは「現在生じている事象」=「株価を構成する事象」と考えていることが理解を妨げる要因となっています。
将来に起こるであろうことが推測できるならば、それを前提にして株価が形成されることは不思議なことではありません。大切なことは「将来起こるかもしれない事象」が「株価を構成する事象」であることです。ただ、将来のことをピンポイントで推測することはできません。
再び、コロナ禍の話に戻ります。最初コロナウイルスが発症し始めたころは、まったく先が見えない状況でした。不安が先走り、マスクや消毒用アルコール不足がそれに輪をかけました。経済活動は停滞し、景況感は悪化、企業業績も悪化する状況となりました。株価はこの状況を「織り込む」形となり下落してゆきました。
ここで考えるべきだったことは、疫病は永久に続くのかということです。何時になるかは解らず、改善する可能性も解らない状況下(コロナ禍から回復する可能性が低い状況)では、将来生じるであろうコロナ禍からの回復過程を織り込むことはできませんが、将来のシナリオが見えれば、コロナ禍からの改善を織り込み(コロナ禍から回復する可能性が高くなる状況)始めることは十分考えられるシナリオです。
実際には、転機になったのは各国の政策当局がコロナ禍対策として政策対応を行い始めた時期でした。これは、コロナ禍から回復する可能性が高くなり始めたことになります。すると、株価はコロナ禍からの収束が見えない状況を前提にして下落していた状況(悪い材料を織り込む)から転じて上昇し始めました。背景には、政策当局が経済の落ち込みを抑えている間に、ワクチンの開発が進展しコロナ禍が収束し始めるシナリオの実現可能性が高まったことにあります。
まとめると・・・・・、
以上のように考えれば理解しやすいと考えています。
言い訳と予告編(次はありますか?)
文章量の関係上、説明を簡素化してしまった部分も多いかと思います。今後は簡素化してしまったところを掘り下げるような取り組みも行いたいと考えています。例えば、「織り込む」と同じように使われる「織り込み済み」について。どの程度「織り込んでいる」のかを考えるツールとしての投資指標について。また、市場で話題となっている「インフレ」などの時事ネタ的なことも取り上げていく予定です。これに懲りずに、また読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。
ご留意事項
当記事はアイザワ証券投資顧問部の一社員が株式市場に対する一般的な事象について解説を行ったものであり、同部門が提供している商品の運用方針とは関係はありません。
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