ザ 語源 第8回 インフレーション
2022.05.12 (木)
インフレーション
インフレーション(インフレ)とはモノやサービスなど物価が一定期間にわたって上昇する状態を表します。インフレーションは英語ではinflationと表され、「in~の中に」とラテン語の「flare吹く」が合わさった言葉、「空気を吹き込む」が語源となっています。また「通貨膨張」という意味もあります。通貨に空気を吹き込んで膨張させる=通貨の価値を薄めるといったイメージです。
一方、デフレーション(deflation)は物価が持続的に下がることであり、インフレーションとは反対の経済現象です。「de 離れて」とラテン語の「flare吹く」が語源です。接頭語の「de」には「強調」や「離れて」という意味の他、「マイナス、除く」の意味もあります。デフレーションは吹くことのマイナス、つまり「空気を抜く」または「萎(しぼ)ませる」ことを表しています。
経済用語であるインフレーションから少し脱線しますが、インフレには「言葉のインフレ」というものもあります。「お前」や「てめぇ」、「貴様」は相手を下に見る言葉ですが、「お前」は「御前様」、つまり目上の人に用いる尊称でした。「てめぇ」は「手前」で相手に対して使うのではなく、本来自分自身を謙遜して用い、「貴様」は文字の通り高貴な人に使う言葉でした。「言葉のインフレ」とは元々目上の人に使っていた言葉が時間とともに本来の価値が薄くなってしまうことなのです。そういえば昔日本のポップソングの中で「恋はインフレーション」というフレーズがありましたね。相手と一緒に育む「愛」とは違い、「恋」は自分自身の中で一方的に膨らんでしまうものです。インフレと同じようにコントロールが難しいものなのでしょう。
ところで長い間インフレとは無縁と思われた日本においても身近な日用品や食品、ガソリンや電気・ガスなどが値上がりしています。資源価格や賃金の上昇または自国通貨安(円安)による輸入価格の値上がりが原因となる物価上昇を「コストプッシュインフレ」といいます。原材料や仕入れ価格、輸送費の上昇を販売価格に上乗せせざるを得ない供給側の要因によって起こるインフレがコストプッシュ型となります。
一方、国民の総需要が総供給量を上回り物価が上昇することを「ディマンドプルインフレ」といいます。需要(ディマンド)が物価を牽引するインフレという意味です。「ディマンドプルインフレ」は、少々価格が高くても買いたい商品を手に入れたいほど消費者の懐が温まっている状況、つまり景気が好調な時に起こります。一般的にコストプッシュインフレは「悪いインフレ」、ディマンドプルインフレは「健全なインフレ」と認識されています。
4月28日、日本銀行(日銀)は金融政策決定会合において金融緩和の継続を決定しました。日銀は現在の物価上昇を「コストプッシュインフレ」と見ています。一般消費者の所得が伸び悩む現在、「コストプッシュインフレ」は購買力の伸びを抑えることになるので経済にマイナスとなり、結果物価上昇の下押し圧力になると読んだのだと思います。日銀は消費者の所得の伸びと共に、「健全なインフレ」が定着するまで金融緩和は継続したほうが良いと判断したのです。
※本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。
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