
プラチナNISA、こどもNISAとは?毎月分配型投資信託は「タコ足配当」に注意
2025.04.22 (火)




2025年4月16日、自民党の資産運用立国議員連盟が政府への提言案に、金融庁:NISA(少額投資非課税制度)を高齢者や未成年向けに拡充することを盛り込むという報道がありました。
高齢者向けの「プラチナNISA」(仮称)、未成年を対象とした「こどもNISA」(仮称)の創設などを取りまとめ、来週石破首相に提言案を提出する予定です。プラチナNISA(仮称)では、65歳以上などに限定し、現行のNISAでは対象外の「毎月分配型の投資信託」を対象とする予定ですが、毎月分配型の投資信託にはファンドの収益ではなく自身の元本を分配金として受け取ることがあります。
タコが自分の足を食べることになぞらえ「タコ足配当」と揶揄されています。
今回は2025年4月17日現在で分かっているプラチナNISAとこどもNISAの概要、毎月分配型投資信託の注意点を解説していきます。
プラチナNISA、こどもNISAとは?
2025年4月16日、自民党の資産運用立国議員連盟は政府への提言案について、NISA(少額投資非課税制度)を高齢者や未成年向けに拡充することを柱として、政府の成長戦略への反映を目指すことを取りまとめました。来週、石破首相に提言案を提出する予定です。
提言案には高齢者向けの「プラチナNISA」(仮称)、未成年を対象とした「こどもNISA」(仮称)に以下の内容を盛り込むことが見込まれています。(2025年4月17日現在)・プラチナNISA(仮称)
65歳以上などに限定し、現在のNISAでは対象外の「毎月分配型の投資信託」をNISAの対象とする・こどもNISA(仮称)
未成年もNISAのつみたて枠を利用できるようにする現行のNISAでは、毎月分配型の投資信託は対象外です。
毎月分配型の投資信託は、決算が毎月あり収益などを収益分配金として分配する商品ですが、運用益の一部を再投資に回さず分配金として契約者に払い出すことが「中長期の資産形成という趣旨に沿わない」ことが理由です。しかし、4月16日の日本経済新聞によると「年金を主な収入源とし、元本を取り崩すリスクがあっても毎月の生活費の下支えにつなげたいとする高齢者のニーズが強かった」ことから、高齢者向けのNISAでは対象とする提言を行う予定です。
同紙には「毎月分配型の投信を購入する際に、NISA口座の資産を売却せず移行できる措置も検討する」という記載もあります。2024年1月に未成年向けの「ジュニアNISA」は廃止されましたが「こどもNISA(仮称)」として復活させる予定です。
こどもNISA(仮称)は、若年層の金融リテラシーを向上させることなどを目的に未成年にNISAのつみたて枠を拡充する見込みです。金融庁が既に高齢者向けの少額投資非課税制度(NISA)を創設する検討に入り、2026年度の税制改正要望に盛り込む方向(日本経済新聞)という記事もあります。
プラチナNISAで対象となる予定の毎月分配型投資信託とは
投資信託は基本的に年に1回以上、資産や負債、損益などを計算し結果を運用報告書として作成する「決算」を行います。
ファンドによっては、決算の後に分配金が分配されるものがあり、中には毎月分配型の投資信託も存在します。毎月分配型の投資信託は毎月分配金をもらえるというメリットがある一方で、中にはファンドの収益ではなく投資家の「元本」を分配する商品があります。
このような行き過ぎた分配は、タコが自分の足を食べることになぞらえて「タコ足配当」と揶揄されています。
投資信託の普通分配金と特別分配金(元本払戻金)
追加型株式投資信託の分配金には、普通分配金と特別分配金(元本払戻金)があります。
普通分配金は「収益の分配」として支払われるものですが、特別分配金(元本払戻金)は自身の元本から払い戻される分配金です。
自身が購入した投資信託の元本を受け取っています。
元本払戻金(特別分配金)が支払われると、投資信託の個別元本(購入時の基準価額)は低下します。元本払戻金を受け取った後は、その分個別元本が下がっていくのです。例えば分配落ち前(分配金が支払われる前)の個別元本が11,000円で、決算時の基準価額が10,000円、元本払戻金(特別分配金)が1,000円の場合はその後の基準価額は9,000に下落します。
元本払戻金(特別分配金)の支払いが続くと、個別元本は段々低下していくことになり売却時に損失を被る可能性があります。記事には「年金を主な収入源とし、元本を取り崩すリスクがあっても毎月の生活費の下支えにつなげたいとする高齢者のニーズが強かった」とあります。
しかし筆者は、元本を取り崩すリスクがあることを知らない高齢者が毎月分配型投資信託を購入してしまうことを危惧しています。その場合、老後の資産がどんどん減少してしまう恐れがあります。なお、普通分配金には税金が課されますが元本払戻金は自身の元本を受け取っているだけですので課税対象外です。
NISA制度ではどちらの分配金も非課税となります。
まとめ
「プラチナNISA」(仮称)、「こどもNISA」(仮称)の創設などを取りまとめた提言案は、来週石破首相に提出される予定です。
今後の動向を見守っていきましょう。
記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/)
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