China Market Eye 上海・南京西路に見る海外ブランドの変遷
2024.12.30 (月)
上海・南京西路に見る海外ブランドの変遷
上海随一のブランド街といえば、静安区の南京西路です。僅か1.8万平方キロのエリアには、2,800以上のブランドが集まり、その70%強を世界的な高級ブランド(上海全体の約3分の1)が占めるとも言われます。
上海・南京西路のプラザ66(恒隆広場)
しかし南京西路でも、昨年来の消費低迷や不動産不況の煽りを受け、大きな変動期を迎えようとしています。
例えば高級ブランド店がひしめくプラザ66(恒隆広場)のショッピングモールの売上高はこれまでに年々増加してきましたが、2024年1~6月は前年同期比23%減と減収に転じました。モールを保有する恒隆地産(香港:101)は、消費マインドの低迷に加え、円安で中国消費者の多くが日本にブランド品(中国より約3割安)を買い求めたことも影響したと説明、中国の高級ブランド消費はこれまでの異常な成長からすう勢的なものに変化してきていると分析しました。
また、今年の南京西路で最も衝撃的な出来事といえば、老舗の日系百貨店、伊勢丹が今年6月に27年の歴史に幕を下ろし閉店したことです。ネット通販の拡大や消費者の節約志向などに加え、中国若年層の生活ライフスタイルは目まぐるしく変化しており、それに対して古い業態の百貨店は対応できなかったとも観察されます。その跡地は、複合型商業施設として再開発される予定です。このほか、販売不振で撤退や事業縮小を余儀なくされた海外ブランドも少なくありません。
アップルショップの静安寺旗艦店(2024年3月に新規オープン)
バレンシアガの南京西路旗艦店(2024年12月に新規オープン)
大きな逆風に直面するにも拘らず、今年の南京西路エリア全体の売上高は前年に比べて増加する見通しです。その背景には、今年前半だけで新規出店数が58店に達するなど、中国経済のポテンシャルや中国消費者の購買力を見越した海外ブランドの出店ラッシュが続いているからです。
例えば、米アップルは今年3月に中国最大の旗艦店(床面積は世界2番目、上海8軒目のアップルショップ)をオープンしました。また、仏高級ブランドの「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は今年5月に上海でプレ・スプリング・コレクションを発表したのに続き、12月に南京西路の興業太古フィに延床面積約1,000㎡という最大規模の旗艦店をオープンしました。
さらに、ファッション大手のシャネルは延べ床面積1,700㎡の上海旗艦店をプラザ66に新たにオープンし、隣接するブルガリやエルメスなどと競う予定です。また、南京西路大通りにスイスの高級スポーツウェアのX-BIONIC、欧州老舗の高級ジュエリーショップのPEGASUSやWellendorffなども上海初出店を控えて中国の春節(旧正月)に合わせて急ピッチで内装工事を進めています。このほか、日本勢としてファッション大手のユナイテッドアローズは南京西路のケリーセンターに中国初の直営店を来月に開業すると発表しました。
2025年から2026年にかけて、南京西路エリアでは歴史と文化的な街として再開発された「張園」と上海チャイナリソーシズランドセンター、伊勢丹跡地の再開発、プラザ66の3期目工事も完了する予定で南京西路エリアの売り場面積が一層拡充され、業種・業態の新陳代謝は進むと同時に各商業施設間の競争も激しくなりそうです。
上海市政府は、国際化の一環として内外ブランドの新商品及びファッションの発表会を積極的に誘致し、消費振興の起爆剤として期待をかけています。その南京西路エリアは、ニューヨークのフィフス・アベニュー、パリのシャンゼリゼ通り、東京銀座と肩を並べるような世界的な商業地として位置づけられており、2025年までにその売上高を1,000億元(2.15兆円)以上に引上げる目標を設定しています。
2025年、消費の拡大は中国経済にとってかつてないほど至上命題となっているだけに、中国の消費回復がいよいよ本格的に始まるか、その潮流をリードする上海・南京西路からますます目を離せません。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。