亜州潮流 インドネシア経済考察 ~現地から見る銘柄動向~
2024.08.30 (金)
インドネシア経済考察 ~現地から見る銘柄動向~
今回のインドネシア現地調査を踏まえ、6月号で新首都ヌサンタラの様子、7月号は高速鉄道と不動産開発についてご紹介した。今回は現地から見たインドネシア企業の印象について述べたい。基本的にインドネシア経済の展望は明るい。2.8億人のイスラム圏最大の人口を抱え、平均年齢が29歳と若く、豊かな鉱物資源に恵まれている日本の約5倍の国土を有するなど、経済的に優れた要素に事欠かない。現地で大統領選挙の結果について聞いた感想の中に「基本的にインドネシアは誰が大統領になろうと(日本よりは)高い経済成長率を維持し発展する」とのコメントもあったが、その通りだと思う。
景気敏感セクターの回復見通しは来年以降
一方、足元の2024年の経済状況は、やや停滞するとの見方が多かった。例えば小口・中小事業者への融資割合が高いバンクラヤットインドネシア(BBRI)では、2月大統領選挙以後は選挙端境期に伴う、印刷・広告などの需要が落ち込み、融資先の業績が低調となった。そのため、不良債権比率の上昇や引当金の増加などが起き、融資審査の厳格化が23年比で業績の足枷となっているとの見解が聞かれた。また重機を手掛けるユナイテッドトラクターズ(UNTRでは、新首都ヌサンタラの開発現場など建設機械の需要が好調なのではないか?との問い掛けに対し、工事全般が遅れており需要の大きな増加にはつながっていないとの回答に拍子抜けした。総じて銀行や重機など景気敏感業種、公共工事や不動産開発など政治が影響する業界では、総じて24年は低調に推移し、来年の地方選挙を経て回復するとの見通しが一般的であった。
市民生活は経済成長を実感
今回の現地調査で対照的に事業環境が好調な業種として、製パン業や食肉・加工食品企業が挙げられる。例えばチャルーンポーカパンインドネシア(CPIN)では、養鶏用の飼料や食肉処理の分野も堅調だが、近年は冷凍加工食品が飛躍的に伸びて来ている。経済成長により一人当たりの所得が増加、大都市近郊の住宅地では男女共働きの核家族化が進行している。食品スーパーやコンビニエンスストアが増加、店頭には新日的な国民性を反映してか、GYOZA(餃子)やシュウマイなど完全な日本語とは言い難い日本風ブランドの冷凍食品で埋め尽くされている。別の商品棚には日持ちのする菓子パンが並べられている光景が展開されている。こうした業種は、先進国では業績が安定的だが地味なディフェンシブ業種と位置づけられるが、新興国では経済成長と比例し炭水化物や動物性たんぱく質の摂取量が増加し、こうした業種にグロース株に相応しい成長をもたらすと筆者は予想している。
※写真はすべて筆者撮影
※「亜州潮流」は、アジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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