
Aizawa Market Report 深刻化するベトナムの大気汚染
2025.02.27 (木)




深刻化するベトナムの大気汚染
2024年のベトナムの実質GDP成長率は前年比+7.09%と、政府の目標を達成した。しかしこの高成長と引き換えに、ベトナムは都市部を中心に近年、深刻な大気汚染に見舞われている。日本の高度成長期である1950~70年代にかけて、大都市を中心に光化学スモッグが問題になったり、中国の高成長期である2000年代に北京など大都市の大気汚染がクローズアップされたりしたのと同様の公害が、現在ベトナムでも起こっている。

スモッグに覆われるハノイ市内(写真は筆者の知人提供)
筆者がベトナムに赴任した2018年5月時点で、大気汚染はすでに問題となっていた。ハノイでは雨の少ない秋から春にかけてがひどく、11月から3月頃には青空が見える日はほとんど無かった記憶がある。スマホなどでAQI(Air Quality Index:大気汚染指数)をリアルタイムで地域ごとに確認できるアプリがあり、PM2.5(微小粒子状物質)等の大気汚染物質の濃度が表示され、Level1のGood(良好)からLevel6のHazardous(危険)まで数値とともに色分けされる。Level5のVery Unhealthy(非常に健康に悪い)になると、外出は控えるように促され、学校では体育の授業も体育館で行われ、子供たちは外で遊ぶことは出来ない。
現地メディアによると、今年2月12日にはハノイのAQIは世界の首都でワースト1となったようだ。筆者が駐在していた時にも何度かワースト1になったことはあり、改善には相当時間を要するだろう。ベトナムの大気汚染の最大の原因はバイクによる排ガスと言われている。ハノイでは約900万人の人口に対し、約800万台のバイクが登録されており、市民の重要な移動の足であるが、渋滞だけでなく大気汚染を引き起こしている。また高層ビルの建設現場での粉塵や、工業地帯の排煙、石炭火力発電所、さらには野焼きなども大気汚染の原因となっているようだ。
大気汚染対策として、政府も数々の対応策を打ち出している。一つは公共交通機関の整備で、2021年11月にハノイでメトロが開通したのに続き、2024年12月にはホーチミンでも初のメトロが開通した。また電気自動車(EV)の普及を促し、政府は2030年までにバスの50%、タクシーの100%をEVにすることを目指している。EVの初回登録料の3年間の無料化が2022年3月に開始したが、政府は今月、2年延長する法案を提出した。さらにチン首相は今年2月、ベトナム電力公社(EVN)およびペトロベトナム・石油ガスに対し、ベトナム初となる原子力発電所を2030年までにニンチュアン省に完成させることを指示した。建設計画には日本やロシアを含む5か国とパートナーを組むことが盛り込まれているが、原発建設により大気汚染だけでなく、外国直接投資の拡大に伴う電力需要の高まりにも対応することが期待される。
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