Aizawa Market Report インドネシアのプラボウォ新政権が発足
2024.10.25 (金)
インドネシアのプラボウォ新政権が発足
10月20日、インドネシアで新大統領の就任式が執り行われ、グリンドラ党の党首であるプラボウォ・スビアント氏が第8代大統領に就任した。同氏は第2代大統領の故スハルト氏を義父に持ち、過去に陸軍中将や国防大臣を歴任するなど国軍での影響力が大きく、2014年以降3回にわたり大統領選挙にチャレンジした末の当選となった。また副大統領にはジョコ・ウィドド前大統領の長男であるギブラン・ラカブミン・ラカ氏が就任し、翌21日に主要閣僚の任命を経て新政権である「メラ・プティ」(インドネシアの国旗の色を示す赤と白)内閣が正式に発足した。
新政権の大臣数は前政権の34人から48人に大きく増加し、ゴルカル党とグリンドラ党、国民覚醒党、国民信託党、民主党など幅広い政党から閣僚が任命された。また国会で最大の議席数を有する闘争民主党やナスデム党、福祉正義党も新政権支持の構えを見せており、新政権は野党勢力が事実上不在の「オール与党体制」になりそうだ(下図参照)。
プラボウォ新政権の目玉政策(5年以内に取り組む優先度の高い政策)として、学校給食の無償化や健康診断の無料実施、低所得向けの現金給付・住宅建設、公務員給与の引き上げなどが挙げられる。国家予算委員会が9月17日に承認した25年度予算案によると、歳出は24年度見込み比6%増の3621.2兆ルピアに増額され、学校給食の無償化や病院の新設、学校の改修向けの予算が盛り込まれた。こうした財政拡張的な動きは財政赤字の悪化を招くと懸念されているものの、当局は経済成長や歳入庁の新設などを通じて歳入を増やして財政赤字の対GDP比を24年度見通しの2.70%から2.53%に抑える計画だ。このほかプラボウォ大統領は国内産業の高付加価値化と工業化、食料・エネルギーの自給率向上、貧困の撲滅などに取り組むことで、任期中の経済成長率年平均8%、2045年を目途に先進国入りを果たすという野心的な目標を掲げた。
近年インドネシアの経済成長率が5%台で推移していることを踏まえると、新政権が掲げる目標の実現可能性に疑問は残るが、同国のファンダメンタルズは非常に堅調だ(経常収支改善、インフレ率低下、内需回復)。株式市場ではジャカルタ総合指数が9月19日に過去最高値を更新し、インフレ率低下や利下げに伴う景気安定化期待からバンク・マンディリ(BMRI)やインドフードCBPサクセス・マクムール(ICBP)、ミトラ・アディプルカサ(MAPI)などの銀行、消費関連企業の株価が大きく上昇した。米国の利下げ開始で同国を取り巻く外部環境が改善する中、新政権の施策は企業業績の改善を後押しする可能性がある。一方リスク要因としては、財政赤字拡大や通貨安再燃、政治腐敗などに留意したい。
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