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Aizawa Market Report タイ経済の現状と今後の見通し

2024.08.28 (水)

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Aizawa Market Report タイ経済の現状と今後の見通し

タイ経済の現状と今後の見通し

8月14日、タイ憲法裁判所は憲法に定められた倫理規定に違反したとして、セター首相の解職を命じ、同日付でセター氏は失職した。セター政権は昨年9月にタクシン派の「タイ貢献党」が他政党と連立を組んで発足し、今年4月に行った内閣改造で同じ党に属するピチット氏を首相府相に任命したが、その後同氏の犯罪歴(過去に贈賄と法廷侮辱罪で禁固刑)が発覚したため、セター首相はその任命責任が問われて解職された。これを受けて、818日に「タイ貢献党」の党首で、タクシン元首相の次女でもあるペートンタン・シナワット氏が新首相に就任し、セター氏の政治路線を引き継ぐ形となった。

タイの議会制度は上院と下院の二院制となっており、このうち上院(定員200名、任期5年)は軍に近い保守派の影響力が強く、首相選出権を持たないものの、重要法案の審議や独立機関の人事承認などで大きい権限が与えられている。一方下院(定員500名、任期4年、右上図参照)は一般選挙のため民主派の影響力が強く、20235月に行われた下院総選挙で野党の「前進党」が第1党に躍進したが、その後「タイ貢献党」と他政党の大連立により「タイ貢献党」が政権を握り、「前進党」は20248月に憲法裁判所から国王を元首とする民主主義体制の転覆を企てたとして解党が命じられた。足元、首相交代後も「タイ貢献党」主導の政権は続くが、軍や親軍政党はタクシン派の影響力が強まることを警戒しており、両勢力の争いが今後政治的な混乱を招くとの懸念が根強い状況だ。

一方、経済の面では、タイの202446月の実質GDP成長率は前年同期比+2.3%とASEAN主要国の中で景気回復の遅れが目立っている。その主な要因として、①政府予算の承認遅れによる公共投資の低迷、②昨年実施した連続利上げによる家計・個人消費への打撃、③世界的な景気減速や他国との競争激化による輸出の伸び悩みなどが考えられる。ただ、足元46月の観光客入国者数が新型コロナ禍前の9割以上まで回復し(上図参照)たほか、政府消費もやや持ち直したため、タイ経済は政治的な不透明感と内需不振という課題を抱えながらも一部改善の兆しが出始めている。今後通貨安やインフレの圧力低下が見込まれる中、タイの消費関連企業の業績回復が期待される。

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