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アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2022年3月

2022.03.20 (日)

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2022年3月

世界の関心はコロナからロシア問題に

世界的にコロナ問題に対する警戒感が若干低下、ウィズコロナ、アフターコロナの方に向かい始めていたところで、224日にロシアがウクライナ侵攻、戦闘が激化しています。ロシアが原発施設を占拠するなど、戦況は悪化する一方で、着地点が見えてこない状況です。そのようななかで、近日中に償還や利払いが予定されている国債のデフォルト懸念も高まっています。

また直近は、コロナ、ロシア問題に次いで新たな問題も出てきました。世界的な物価高騰です。原油は一時08年以来約13年ぶりとなる高値をつけたほか、小麦先物価格は約14年ぶりの高値、アルミ、亜鉛、銅なども、14年ぶりもしくはほぼ史上最高値の水準となっています。

先進国でも、影響は顕著で、311日に発表された米国の2月のCPIは、前年同月比7.9%上昇と、約40年ぶりの高い伸びとなりました。しかし、このCPIは、原油価格が高騰する前のデータであることから、今後発表されてくる3月以降のCPIは、さらに高まると予想されます。今後の米国FRBの利上げ方針にも影響が出てきそうです。

今後のアジア新興国の注目ポイントは?

足元のアジア新興国でもインフレ傾向となっており、うち、直近のインフレが目立っているのがタイです。34日に発表された2月のCPIは前年同月比5.28%でした。5%超えとなったのは08年以来です。330日には金融政策員会の実施が予定されています。現在のタイの政策金利が0.5%と過去最低水準であること、現在の物価高などの水準からみて、利上げが実施される可能性は高まっているとみてよいでしょう。

経済面だけでなく、国内のデモが頻発していることもタイ経済を不安定化させています。現政権、王政に対する不満など、国民の信認離れが目立つなか、これまでのように国民の行動を抑え込めるようなリーダーがいないことで、混乱が長期化しています。

このように政局が不安定な中で、233月までには、下院総選挙実施も予定されています。タイでは、選挙が実施されるたびに国内経済が混乱する、という傾向がありますが、今回の選挙も、これまで以上に経済の不安定化要因になりうると予想されます。

そのほか、フィリピン統計庁は、127日に2021年のGDP成長率を発表しました。前年のマイナス9.6%からプラス5.6%へ、大幅な改善となっています。高成長の一方で、直近発表された同国の2月のCPIは、3.0%でした。また、通貨フィリピンペソは約3年ぶりのペソ安となっています。通貨安によってインフレが助長される可能性もあり、今のフィリピン経済は、高成長だけを評価できる状況とはいえないでしょう。

なお、59日には大統領選挙実施が予定されています。今のところ、故マルコス元大統領の長男であるマルコス氏がほぼ独走状態となっていますが、直近の世界経済混乱を考えれば、当面のフィリピン経済の不安定要因になりえると思われます。

今月の参考銘柄(中国以外)

世界情勢が先行きが不透明なこと、今後米国の利上げが実施されることに伴って追随利上げ、銀行の利ザヤ拡大が予想されること、の2つの点から、大手銀行株が恩恵を受けるとみています。

ベトコムバンク(ベトナム:VCB)

ベトナムの4大銀行のひとつ、良好な財務状況、高い収益性などの面で、高く評価されている。直近2112月期の純利益は219081億ベトナムドンと最高益となった。2019年には、ベトナムの銀行としては初めて、バーゼルⅡを取得した。日本のみずほFGは、ベトコムバンクの第2位株主。

バンク・マンディリ(インドネシア:BMRI)

インドネシア最大手クラスの銀行で、1997年のアジア通貨危機後にインドネシア開発銀行、インドネシア輸出入銀行、バンク・ダカン・ネガラ、バンク・ブミ・ダヤの4行が合併してできた。直近2112月期の純利益は28282億ルピアと過去最高益を記録した。不良債権比率も低く、収益性、安全性の両面で、高く評価されている。

カシコーン銀行(タイ:KBANK)

タイ大手銀行のひとつで、21年の総資産ベースでみると国内第4位。2010月には、ラインと同行が業務提携を結び、同社初となる銀行サービス「ライン銀行」の提供を始めた。タイではライン登録者が約8600万人と多く、今後の同行の収益チャネルネル多様化につながると思われる。

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ライター

明松 真一郎

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

1990年平岡証券(現アイザワ証券)に入社。加古川支店でのリテール営業を務めた後、ディーリング部、営業本部、生駒支店でのバックアップ部門などを経験。2005年に証券アナリスト資格取得したことを機に、市場情報部(当時投資リサーチセンター)に異動。アセアン株を中心としたアジア株の調査、分析を行う。その経験を経て、現在は投資顧問部に所属。

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