【ベトナムでツナガル】半世紀を超える友好活動・NPO法人茨城県ベトナム友好協会(茨城)
2024.03.14 (木)
2023年に外交関係樹立50周年を迎えた日本とベトナム。昨年は全国各地でベトナム関連のイベントが催され、ベトナムをより身近に感じる方も多かったと思う。
ところで外交樹立前からベトナムとの友好関係を育んできた茨城県ベトナム友好協会をご存じだろうか。今回は友好協会の事務局長を務める村田みのりさんにお話を伺った。
半世紀を超える友好活動
NPO法人茨城県ベトナム友好協会は、ベトナム戦争中の1967年に結成された「日本ベトナム友好協会茨城支部」から始まり、今年で設立から57年目を迎える。
結成当初はベトナム戦争の真っ最中で「自分たちで何かできることはないか」という思いから、県内で反戦運動を展開。ベトナム戦争が終結した後は、ベトナムへの友好活動を「人間を大切にする運動」と位置づけ、ベトナムの国づくりのために支援を続けてきた。
そのためベトナムとの絆は固く、日本で唯一ベトナムから最高位の勲章を個人と団体の両方で授与されている。
仕事と生活を守り、広がる友好活動
歴史ある茨城県ベトナム友好協会の活動は多岐にわたるが、友好協会では現在3つの活動に力を入れている。
1つ目が青少年の育成だ。
友好協会では茨城大学をはじめとする県内4大学の学生を定期的にベトナムへ派遣している。派遣先では大学生との文化交流の他に、地元の児童保護施設を訪れる。
学生たちがフエ郊外にある児童養護施設「アンタイ子どもの家」を訪れた時のこと。付き添った村田さんの話によれば、部屋には何十年も使われてきた木の二段ベッドがあり、10人ぐらいの子どもたちが生活していた。ベッドの枕元にはボロボロのぬいぐるみが置かれ、それを見た学生が突然泣き出したという。
学生に理由を聞いてみると「私たちはありあまる中でもっと欲しいと思うのに、もしかしてこの子にとってはこれが宝物なのかもしれない」と話したそう。村田さんは「現地に行って自分たちの目で見ることで、学生たちは大きな気づきを得ている」と話す。そしてグローバル化が進む中で若者が考える機会を提供していくことが、友好協会が力を入れる青少年の育成に繋がっていることを再確認した。
2016年からスタートした「アンタイ子どもの家」への支援活動
2つ目が県内で暮らす外国人への支援活動だ。
日本では少子高齢化に対応するために、外国人労働者の受け入れが進んでいる。茨城県にも多くの外国人が住んでおり、その在留外国人の数は全国で10番目に多い。そんな中、茨城県ベトナム友好協会は協会員である県内の市町村や在県ベトナム人協会と連携を取り、技能実習生や外国人への支援活動を行っている。
例えば協会員の一つである八千代町には、ベトナム人をはじめとする多くの外国人が住んでいる。町では多文化共生に取り組んでおり、村田さん自身も町の多文化共生推進協議会に参加する。
県内に在住する外国人への支援活動を続ける。大学と連携し、留学生への食糧支援も行う。
3つ目が地域の企業・団体との連携だ。
茨城県ベトナム友好協会には企業や個人、そして県内の国会議員や地方自治体など多くの団体が加盟し、幅広いネットワークを構築している。「ベトナムをきっかけにして人々が集まり、そこから友好・ビジネスの繋がりが生まれている」と村田さん。最近では外国人労働者を雇う企業や介護関連の企業が会員として増えているという。
また友好協会は会員同士が情報交換をし合える場所になっている。そこには仕事と生活を守ることを大切にしていた初代会長の下山田虎之介氏(故人)の思いがある。
村田さんによれば、父親である下山田氏は「仕事と生活の基盤を守らなければ、ボランティアには繋がらない」と生前よく話していたという。困っている人を助けることをライフワークとしていた下山田氏。町会議員時代には町が潤うように企業誘致に取り組み、雇用の創出に力を入れた。「(繋がりを大切にする友好協会には)父の思いが今も残っている」と村田さんは振り返る。
綿々と続くベトナムとの友好の輪
戦後のベトナムを支援したかったという下山田氏。その思いは下山田氏たち友好協会のメンバーをベトナムに向かわせた。当時は戦争の影が色濃く残っていた時代。長距離バスで町から町へ移動したが、ガソリンスタンドはなく、道端で売られていた一升瓶に入ったガソリンを補給しながら目的地まで向かったという。ベトちゃんドクちゃんが入院していたツーズー病院を訪問し、枯葉剤に苦しむ子どもたちに脱脂綿や消毒液など必要な物資を届けた。
「何ができるか分からないけど、できることをやろう」。長年のベトナムに対する友好活動の取り組みが評価され、ベトナム政府から2002年に下山田さんへ、2020年に友好協会へ友好勲章が贈られた。
1992年から始まったベトナム訪問団の派遣活動は、昨年9月に第25次を数えた。特に2014年の第19次ベトナム訪問団は、茨城県知事を始め100人を超える規模の大訪問団となった。首相官邸で式典が行われたのだが、村田さんは通訳に「首相官邸に行けるのは首相か、大統領だ」と言われたそう。民間人の招待は異例の出来事だった。
見送りの際、当時のサン国家主席が下山田氏を抱きしめた。そして「長い間、関わってくれてありがとう。お父さんを大事にしてまた来てください」と娘の村田さんに話しかけた。村田さんは、サン国家主席と下山田氏の間に心の繋がりを感じ取ったと当時を振り返る。
ベトナムとの友好活動に力を入れた下山田氏
最後に今後の活動について、村田さんに尋ねると「目の前で自分たちができることをやる。困っている人を助ける。留学生の支援もそう。これからもできることを地道にやっていく」と意気込む。さらに「日本とベトナムは言葉や発想が似ていて、歴史的なつながりも深い。初めて行っても共感を持てる国かと思う。一度行ってみてほしい」と微笑んだ。
茨城県ベトナム友好協会とベトナムの友好活動は今日も続いていく。
【 団体情報 】
名称 :NPO法人茨城県ベトナム友好協会
住所 :〒310-0022 茨城県水戸市緑町1-1-18 茨城県立青少年会館内
創立 :1967年7月9日
設立 :2022年7月1日 NPO法人化
電話番号:029-224-3500
メールアドレス:webadmin@nv-i.jp
ホームページ :www.nv-i.jp