株式市場の視点 米国投資環境と日本株
2022.02.04 (金)
米国投資環境と日本株
米国の中央銀行(以下、FRB)は物価上昇に対応するため、政策スタンスを景気抑制気味(※1)にする姿勢を強めつつあります。
株式市場もその影響を余儀なくされ、米国株式市場の代表的な人気銘柄であったIT系の成長企業の株価も軟調となり、それらの銘柄のウェイトが高いナスダック総合株価指数は一時二桁を超える下落率になりました。
当面は株価の動きが上下ともに大きくなる状況が続きそうです。その背景としては、
- FRBがインフレを抑制するために、どのような方法(※2)で景気を抑制しようとするのか読み切れないことがあります。
- 緊迫感を強めるウクライナ情勢がエネルギー価格の押し上げ要因になるため、インフレが長期化する懸念が高まっています。
- バイデン政権の大型財投計画成立に目途が立ちにくくなっており、当初考えられていた景気押し上げ効果が弱まりつつあります。
- オミクロン株の影響で物流費・輸送費の上昇や商流の混乱が続く結果として企業業績が株式市場の予想を下回る懸念が残ります。
これらの不透明要因が市場参加者の手控え感を強めることになり、株式市場の厚みが弱まり、一方通行の動きになり易くなっています。
米国債券市場もFRBの利上げの影響を反映すると同時に、景気の減速を示すような動きになりつつあります。今後の日本株式市場についても、米国経済のインフレ抑制と景気の持続性が両立できるように運営が進んでいるかを吟味しながらの動きとなりそうです。
(※1)「金融引き締め」と呼ばれることが一般的です。これまでの間、コロナ過対策を背景に超景気刺激型にしていたため、「正常化」に向けた動きであるとも考えられます。
(※2) 代表的な金融政策である金利を動かす行動についても「上げ幅」、「上げるスピード」などによって経済や株式市場に与える影響が異なります。
図表で見るマーケット
- 1990年7月からの米国の政策金利の動きを黒線で、同期間のS&P500の動きを青線でグラフ化したものです。政策金利が上昇したところは点線で囲んでいます。赤で囲んだ所は株式市場の大幅下落を伴ったところです。前者が2000年のITバブル崩壊で、後者が2008年のリーマンショックです。ITバブル崩壊とリーマンショックの引き金となったのはFRBによる金融引き締めが主因と考えられています。
- 緑の点線で囲まれた所も政策金利の引き上げ時期ですが、政策金利上昇を主因として株価が大幅に下落しなかった局面になります。2020年のコロナ禍による急落は政策金利の引き上げ時期と一致しますが政策金利の上昇が相場下落の引き金となった訳ではありません。
- (政策金利引き上げ)=(株価大幅下落)とはなりません。当たり前ですが、中央銀行は景気やマーケットの敵ではありません。適切な経済成長と健全なマーケットを望んでいます。残念なことにそのコントロールが上手くいかない時もあると考える方が健全だと思います。
- 付け加えると、FRBの金融政策はリーマンショック以降、金利に加えて、お金の流通量をコントロールする政策(※3)を導入しています。これについても景気抑制型に向かうことがアナウンスされています。金利とお金の量が同時に景気抑制型になる状況の影響力が推測しにくい状況なのも、マーケットの関心を高めている理由です。
(※3)量的緩和やQEとも呼ばれます。お金の量を増やして金回りを良くしようとする政策です(少し乱暴な説明かもしれません、詳しく知りたい方はググってみてください)。
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