株式放談 フィンテック企業の考察
2021.11.27 (土)
今の世の中「中抜きビジネスバッシング」という風潮が強まっているように感じます。「中抜きビジネス」とは手間にかかる対価、いわば手数料に対して見合ったサービスを提供していないビジネスのことを指す言葉です。東京五輪開会式の中抜き受発注疑惑などに対して、インターネットを中心に非難の声が上がったことは記憶に新しいことです。
日本は伝統的に「下請けに丸投げする」ということが主にゼネコンなどで行われてきましたが、その利益の収奪行動ともいえる慣習に疑問符がつけられているわけです。
私ども証券会社も価値のある提案を皆様にしていかねばならぬと肝に銘じております。
大企業のコスト
「中抜きビジネス」とは違いますが、伝統的な大企業が販売する製品やサービスはどうしてもコストがかさんだ大掛かりな商品になってしまいがちです。大企業は多くの社員を雇用しているのでどうしてもそうなってしまうのでしょう。また、そうした商品を導入してビジネスを行う会社のコストもかさむことになります。
最近はECビジネスが主流になっていますので、コスト管理はかつてにも増してビジネスの重要な課題になってきています。
新興企業の功績
そうした古い商慣習に次々と風穴を開けているのが最近のクラウド企業(インターネットを通じてソフトを提供する企業)だといえます。クラウド企業は国内外問わずほとんどが新興企業です。それらの企業は冒頭に申し上げたような余計なコストを省いたサービスの提供を行うことで、大企業の既得権益分野を侵食し目覚ましい成長を遂げています。
一例として米国のマルケタというフィンテック企業(金融技術提供企業)のお話をします。(誤解がないように申し上げますが、これは特に推奨しているわけではありません)
マルケタは金融カードを低コストで発行できるプラットフォームを提供する企業です。金融カードといえばVISAやマスターカードが有名ですが、カード業界は参入障壁が高い業界でした。マルケタはこの業界に新しいプラットフォームを武器にして参入してきたわけです。マルケタの主要顧客は主にフィンテック企業で、米国アファームやスクエアといった決済サービスを提供している企業にプラットフォームを提供しています。また、ドアダッシュやウーバーといったデリバリーサービス企業にもプラットフォームを提供しており、配達員の配達先の決済カードなどにも利用されています。
マルケタのプラットフォームを利用すれば、大掛かりなシステムや専門的なスキルを有する人材を雇うことなく、3人くらいの担当者を配置すれば、金融カード・プラットフォームシステムが構築出来てしまうのです。その手軽さから、マルケタの主要顧客は上記の新興フィンテック企業でした。しかし、驚くべきことに、2020年にJPモルガン・チェースといった伝統的な大手銀行もマルケタと提携を結んだのです。
「このことが何を意味するか?」ですが、マルケタのライバルが単にカード発行システムを保有する大手銀行だけでなく、IBMや日立、NECといった大手ITインフラ企業も該当するということです。従来の銀行のように、巨額な投資をして大掛かりなシステムを組まなくてもプラットフォームを構築出来てしまうのですから、IT大手企業には大打撃となりますよね。
今後の流れは?
こうした動きはフィンテック業界だけではなく様々な業界で起きています。従来は大企業が独占的に享受してきた既得権益を破壊することで、これらの新興企業は大きく成長しています。
世の中の変化に合わせて柔軟に対応できる企業が結果的に生き残ってきているのも事実なので、一概に大企業を否定しているわけではありません。大企業の中にも革新的なサービスを打ち出して再成長している企業もたくさんあります。
しかし、それと同時に、世の中の矛盾を正して成長する新興企業に投資することも、大きなリターンを期待できる投資方法だと思います。皆さんも有望銘柄を見つけて投資してみてはいかがでしょうか。
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