Aizawa Market Report トランプ氏再選とアジア新興国への影響
2024.11.27 (水)
トランプ氏再選とアジア新興国への影響
11月5日に行われた米国の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏は民主党のカマラ・ハリス氏を大差で破り、第47代大統領(任期2025年1月~2029年1月)に当選した。同氏は過去に第45代大統領(任期2017年1月~2021年1月)を務めており、今回は2期目の再選となった。
前回の執政時において、トランプ氏は「米国ファースト」の政治スタンスのもと、対外貿易赤字額が最も大きい中国を槍玉にあげ、複数回にわたり対中関税を引き上げた(最終的に最大25%の追加関税)。その結果、米国の対中貿易赤字額は2018年の3777億米ドルから2023年の2521億米ドルに大きく縮小したものの、中国から東南アジア経由の輸出増加と新型コロナ禍の影響等により全体の対外貿易赤字額はむしろ拡大している(上図赤枠参照)。また当該期間中における米国の国・地域別の貿易赤字額は、対ベトナムで2.7倍、対メキシコで約2.0倍にそれぞれ膨らんでおり、この2か国に対する2023年の赤字額合計は2650億米ドルと今や中国を上回っている(下図赤枠参照)。
来年1月から始まるトランプ政権2期目では、同氏の選挙時の主張から中国の全輸入品に対して60%の追加関税と最恵国待遇の撤回、他の国と地域の輸入品に対して一律10%~20%の追加関税などのアクションを起こす可能性が考えられる。アジア新興国の中で中国とベトナムに対する貿易赤字額がとりわけ大きいため、追加関税の応酬となれば第二次米中貿易戦争に発展しかねないほか、迂回輸出封じ込めの措置が取られればベトナムにも飛び火するだろう。また、インドやマレーシア、インドネシアに対する米国の貿易赤字額は相対的に少ないとはいえ、これらの国は日本や台湾と違って米国で現地生産を行うなどの関税回避手段が限られるため、経常収支の悪化につながる可能性がある。一方、米国経済にとってもトランプ関税は負の影響をもたらすことが予想される。米国は名目GDPの約7割を個人消費が占め、長年にわたって世界中から値ごろな製品を輸入することで個人消費の成長を押し上げてきた。足元ようやくインフレが沈静化しつつあるなか、性急に関税の引き上げを実施すればインフレ再燃や個人消費低迷につながりかねず、米国は自国の利害を踏まえた上でアジア新興国に対して柔軟な対応が求められる。
ご留意事項
免責事項
本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。