アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2023年1月
2023.01.27 (金)
アジア新興国はウィズコロナの方針に転換か?
アジア新興国では、インフレや利上げなどが続いているものの、状況は最悪期を脱しつつあります。行動制限緩和などの動きをみるかぎり、各国ともおおむね「ウィズコロナ」の方針に転換しはじめているといえるでしょう。利上げのきっかけとなった米国FRBの利上げは依然続いていますが、徐々に着地点が見え始めています。これまで米国に追随するかたちで利上げを行なってきたアジア新興国も、利上げ幅が縮小してきました。また、利上げを決定する材料のひとつとされていたのがインフレの進行ですが、インフレも沈静化の兆しをみせています。利上げ、インフレともに最終局面にあるといえます。
もうひとつ、2022年に動きが激しかったのは通貨です。各通貨とも年央あたりからは反転していますが、年間でみれば通貨安となっています。各通貨の2022年対米ドルレート下落率は、フィリピン:9.8%、インドネシア:9.2%、マレーシア:5.7%、タイ:5.0%、ベトナム:3.5%となりました。各国とも通貨防衛・安定化のために利上げ等で対抗しましたが、政策の効果は限定的でした。
直接の関係はありませんが、2022年12月に日本で日銀が⾧期金利変動幅許容枠拡大が発表されました。この発表は市場関係者が予想していなかったタイミングだったため、ドル/円や株式の大幅下落につながりました。当面は大きな政策変更がないとみられていた日本が政策変更を発表したことで、2023年はアジア新興国でも、各国がどのような通貨関連政策が打ち出してくるか、注目を集めそうです。
インドネシアでは2024年の大統領選挙に向けて政争の動きが強まる
2022年はアジア新興国で実施された選挙が注目を集めました。5月に実施されたフィリピンの大統領選挙と11月に実施されたマレーシアの総選挙です。
まずフィリピン大統領選挙ですが、ロドリゴ・ドゥテルテ氏に変わってフェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が新大統領になりました。新たに打ち出している政策などは、ほぼドゥテルテ路線を継続する方針で、フィリピンはおおむね大きな政策変更はないとみてよさそうです。マルコス大統領に変わってからも、前政権のようにフィリピンの高い成⾧を維持していけるか、今後の政策のかじ取りが注目されます。
もう一つのアジアでの大型国政選挙がマレーシアの総選挙です。結果は、野党連合が最多議席を獲得、与党連合を上回り、政権交代が行われることとなりました。ここ数年、マレーシアでは汚職問題が相次いでおり、国民の政治への不信感が強まっています。政権交代後もマレーシアは政治的に不安定な状況が続くと思われます。
そして、2024年に大統領選挙が予定されているのがインドネシアです。このたびの選挙では現ジョコ・ウィドド氏から新大統領へ交替することとなります。インドネシアでは選挙のたびに政権争いが激化し、国内の政局が不安定になるという傾向があります。選挙本番に向けて2023年9月あたりには、正副大統領候補登録の締切りとなる予定で、今後この期限に向けて、主導権争いがくり広げられそうです。現政権が政策の柱のひとつとして打ち出している「首都機能移転計画」への影響も懸念されます。大統領選挙に向けたインドネシアの動きにも注目していきたいと思います。
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