今月のたけぞう氏ピックアップテーマ 各省庁の概算要求に関連した日本企業の動き
2024.10.28 (月)
今月から月に1度レポートを書かせて頂きます。よろしくお願いいたします。
このレポートが配信される日には、衆議院選の選挙結果が既に判明していると思います。
締め切りの関係上、衆議院選以前のレポートなりますことをご了承ください。
衆議院選の事前予想では、自民・公明党の与党の過半数割れの懸念が台頭し、日経平均とTOPIXは、10月8日から10月23日まで11営業日連続で陰線となりました。2012年4月25日~5月16日(13営業日連続)以来、12年半ぶりの記録です。仮に、与党の過半数割れが現実した場合は石破降ろしも考えられ不透明な相場展開は継続しそうです。そうした中で、今回は概算要求から今後注目されるセクターと注目株をお伝えします。
概算要求から見る注目セクター
概算要求とは、翌年度の予算編成に向け、各省庁が取り組みたい事業と必要な費用の見積もりを盛り込んだ要求書を財務省に提出する事です。毎年7月に財務省が要求時のルールを示し、それに沿って8月末までに行うのが通例です。財務省は概算要求を受けて、年末の予算案決定に向けた折衝が本格化します。今回は厚生労働省と経済産業省の概算要求から注目銘柄をお伝えします。
医療・介護DX関連
厚生労働省は2025年度予算の概算要求額を34兆2763億円と発表しました。2024年度当初予算より約4500億円多く、過去最大の要求額となりました。このうち医療・介護DX分野については、マイナ保険証や電子処方箋の普及促進、医療データベースのシステム構築などに取り組むとして、2024年度当初予算比78%増の358億円と大幅増額を求めました。
JMDC(4483)
JMDCは健康保険組合などの医療データを匿名化して保険会社や製薬会社に提供しています。疫学データの収集・利活用のパイオニアとして、健保組合・共済の加入者約1900万人の膨大なデータを持ち、今後も成長が期待されます。2024年8月2日に公表した決算は、7~9月期業績予想売上高前年同期比46%増の102億7700万円で、営業利益前年同期比62%増の17億1000万円と大幅増収増益を見込むとしています。
メドレー(4480)
ドレーは医療ヘルスケア分野で人材・医療プラットフォーム事業で急成長している企業です。同社は、日本最大級のオンライン診療システムである「CLINICS」のオンライン診療 を中核として、患者と医療の双方にとって、テクノロジーの恩恵を受けることのできるプラットフォームづくりに注力しています。2024年8月14日に発表した決算では、2024年12月期第2四半期累計の連結経常利益が前年同期比13.9%増の31.6億円と堅調に推移しています。
エムスリー(2413)
エムスリーは医療従事者向けの情報ポータルサイト「m3.com」を運営しています。国内33万人以上、世界でも650万人以上の医師が利用しているサービスで、2000年の創業以来、医療関係者へ有益な情報を提供し続けている企業です。同社株は、2021年に10,675円の上場来高値をつけました。しかしその後、株価は低迷し今年8月5日に1,126.5円まで下落しました。大幅な減益などが嫌気されましたが、直近の決算は減益幅が縮小傾向にあります。
SAF(持続可能な航空燃料)関連
経済産業省は8月30日、2025年度予算の概算要求を発表しました。水素と二酸化炭素(CO2)を原材料とする合成燃料などの開発に新たに84億円を要求するなど、脱炭素社会の実現に向けて次世代燃料支援を拡充し、総額は2024年度当初予算比約2割増の2兆3596億円となりました。
そうした中、持続可能な航空燃料(SAF)の製造・供給体制構築には、当初予算比約3倍の838億円を要求しました。昨年は276億だったので大幅増額となります。
三井物産(8031)
三井物産は2014年に出資した米社ランザジェットと共に、持続可能な次世代航空燃料SAFの大規模生産に取り組んでいます。ランザジェット社は、今年3月に米国で植物由来のSAFの量産を始めるとしました。同社の発表では植物由来のSAFの量産は世界初、SAFの生産能力は年間900万ガロン(約3.4万キロリットル)で今後ANAなどに供給するとしています。
コスモエネルギーホールディングス(5021)
コスモエネルギーHDの子会社であるコスモ石油は2024年6月、東京都内3カ所のガソリンスタンドで家庭から出る廃食油の回収を始めました。2025年の国内初SAF量産設備の運転開始に向け、原料となる廃食油の調達を進めています。この取組みは東京都の実証事業としてスタートし、都は2023年から国産SAFの大規模製造のため、廃食油の回収キャンペーンを展開中です。経済産業省は2024年6月末、石油元売り大手を対象にSAFの供給を義務付ける規制案を示しています。
レンゴー(3941)
レンゴーは連結子会社である大興製紙がSAFの原料となるバイオエタノールで2027年までに年2万キロリットルの生産を目指します。建築廃材など未利用バイオマス資源から生成するクラフトパルプを原料とし、生物による自製酵素を用いたバイオエタノール生産技術の開発・実証を実施します。また、バイオエタノールを製造するスタートアップ企業、株式会社Biomaterial in Tokyoを今年4月に買収しました。
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