政策保有株の解消良し悪し
2024.09.18 (水)
昨今では、政策保有株式の解消に向けた動きが活発です。そもそも政策保有株式とは何なのか、イメージしづらい部分もあります。簡単に言うと、取引先の株を保有することで関係構築や維持することが目的です。
ざっくり政策保有株式とは
例えばA社の株を、仲の良いB社、C社、D社、E社が過半数持っていたとします。そこにA社を買収しようと目論むZ社が現れたとしても、B~E社が売らない限り買収に必要な株数を集められません。また、B~E社は株主総会で議決権を行使することもできます。都合の悪い株主提案には賛同しないなど、政策保有株式は何かと都合がよいシステムといえます。
日本ではそのような慣習が続いていましたが、一方で経営が腐敗しやすい、資本効率が悪いなどの指摘もあります。そのようななか、東証の要請やファンドの影響などもあって、近年では政策保有株式を解消する方向に流れが変わってきました。最近はどこどこがF社株を売却といったニュースがよく流れます。肌感覚だと月に最低1回~2回はある印象です。
政策保有株式を解消した場合の影響
政策保有株式の解消となると、市場で売り出すか、自社株買いを行うかが主な方法になります。このうち市場で売り出すとなると、安定株主から離れて不特定多数の株主に渡ることとなります。
コロナ禍ではマスクが一時的に高騰しましたが、流通量が安定したら価格は落ち着きましたよね。その後は必要以上に出回ったこともあり、マスクの投げ売りもありました。需要と供給の関係上、価格はそのように動きます。株にも同じことが言え、市場に出回る株数が増えれば、需給が悪化して株価は下がりやすくなります。
自社株買いを行う場合、金庫株になるか消却されるかのどちらかになります。需給悪化を懸念した株売りは心配する必要がありませんので、投資家にとってはうれしい解消方法ですね。
狙われる可能性
政策保有株式を解消したらゴールではありません。これまでよりも、業績と株価をいっそう意識する必要が出てきます。業績が悪ければ株価は下落、株価が下落(時価総額が減る)
して、もしトヨタ自動車やソニーグループを数千億円で買えるとなったら、即買収されそうですよね。政策保有株はないので、買収側が良い条件を提示されれば多くの投資家が頷くと思われます。
昨今では、アクティビスト(物言う株主)といわれるファンドの動きが活発です。保有株数が5%を超えたら大量保有報告書を提出する必要があり、最近では毎日何かしらの報告書が提出されます。その中には、海外の有名なアクティビストや旧村上系のファンドなども多いです。
とある企業の株価が低迷したところで大量に買い、議決権を得るところまでどのファンドも一緒です。ただ、大規模な株主還元などを提案して株価を吊り上げようとするか、再建に向けた建設的な提案をするかはファンドによってまちまちなところ。ファンドに目を付けられたというだけで投資家の見方が変わってくるので、経営陣は常に危機感をもつ必要があります。
政策保有株はどこで確認できる?
何はともあれ、政策保有株の売り出しによって自分の保有株が下がるのは避けたいところ。可能性のありなしを把握しているだけでもストレスのかかり方に差があるので、投資する前に事前に把握しておきたいですね。
どうやって確認するかは、有価証券報告書が役に立ちます。業績ニュースや決算短信は見ても、有価証券報告書まで丹念にチェックしているという人はあまり多くありません。ただ、膨大なページの中に大事なことも多く書かれているので、これを機にチェックしてみることをお勧めします。
最後は調べ方のレクチャーです
例)トヨタ自動車
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 2024年3月期 117ページ目
上の画像はトヨタの有価証券報告書の一部。なんと244ページもあり、さすがにすべてを読むのは厳しいです。上の画像がどのページにあるのか探すだけでも一苦労ですね。幸い、紙ではなくPDFなどで電子化されているので、指定文字の検索機能(ctrl+F)を使うと便利です。検索バーに「政策保有」「政策投資」「政策」など、ヒットしそうなワードを入力してみましょう。
トヨタの有価証券報告書は記載が丁寧で、なぜその株を保有しているのか分かりやすく書かれています。全社がそうというではありませんが、何の銘柄を保有しているのか分かればまずは十分です。
出所:トヨタ自動車 有価証券報告書 2024年3月期 120ページ目
こちらは具体的な政策保有株の一覧です。これは一部で、トヨタはほかにも保有しています。120ページ以降に記載されているので、気になる人は原本を見てみましょう。ちなみに、有価証券報告書は会社の公式ホームページ、または金融庁の電子開示システム「EDINET」で見ることができます。
出典:EDINET閲覧(提出)サイト(https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/week0010.aspx)
こちらから最新の有価証券報告書をクリックすれば別ウィンドウが開きます。そのウィンドウでは項目ごとのページを表示できる機能、文字の検索機能もあるため、活用してみることをおすすめします。
記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/)
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