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ベトナム

乱高下するベトナムの不動産、建設関連株

2022.01.26 (水)

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

乱高下するベトナムの不動産、建設関連株

不動産、建設関連企業株の急騰

急騰のきっかけとなったのが、2021年12月10日に実施されたベトナム・トゥーティエム地区の不動産開発用地の入札において、入札価格の約8.3倍の24.5兆ドンと高額で落札されたことがきっかけだ落札したのは、地場系不動産開発大手タンホアンミン傘下のゴイサオベト社(未上場)で、この高額落札により、不動産開発用地を多く保有する企業、開発に携わる企業の株価が急騰した。

しかし、その後、12月下旬にはチン首相が、関連機関に対して、直近の土地競売入札に異常がないか、検査するよう指導した。政府当局が、市場の安定性へ配慮、警鐘を鳴らしたといえる。その後も、株価急騰が続いたが、2022年1月11日には、タンホアンミン社は落札した物件の購入を取り消す、と発表した。この購入取り消しによってゴイサオベト社が入札時に保証金として納付した5,884億ドン(約30億円)は国に没収されることとなった。なお、ベトナムでは2022年は2月1日が旧正月(テト)で、前後を含めて9連休となる。個人投資家を中心に、小遣い稼ぎのための短期売買を行なったことで、乱高下につながったといえよう。

今後の見通し

同業界を含めて、ベトナム株式市場では、直近口座を開設した投資家が急増した。2021年12月の国内投資家の口座開設数は、前月比2.6%増の226,580口座と2か月連続で20万超となり、単月で過去最高を記録した。2021年年間の国内投資家口座開設数は153万口座余りと、前年の約4倍で、2017年から2020年までの4年間合計分をも上回っている状況だ。ベトナム株式市場では、直近株式投資を開始した投資家の売買が相場変動要因のひとつになっていると思われる。

直近急騰(その後に急落)した不動産、建設株だが、ファンダメンタルズを評価しての値動きとはいえない。先述したように、2021年12月に実施された土地入札が想定以上の高額で落札されたことで、土地開発などに携わっている企業の株がはやされたのちに、落札取り消しによってはしごを外されたかたちだ。

乱高下した不動産、建設株だが、ベトナムにおいて、不動産開発やインフラ投資の需要は旺盛で、今後、世界情勢が落ち着いてくれば、再評価されてくる可能性がある。直近の反落でほぼ急騰前の水準まで値下がりしており、そろそろ正当な評価に変わってくる見通しで、ベトナム全体、他業種に比べて不動産、建設関連企業の反発余地は大きいと思われる。

ベトナムの主な不動産・建設関連企業

ビングループ (VIC)

業種:コングロマリット
時価総額:361.49兆ドン

国内最大のコングロマリット企業で、ホテル、オフィス、商業施設など不動産開発を中心に事業を展開している。また、2017年9月から同社傘下の「ビンファスト」を通じて自動車事業を行なっている。

ビンホームズ (VHM)

業種:不動産
時価総額:331.80兆ドン

ビングループ傘下で国内最大の住宅開発会社。特に中高級住宅の開発販売に強みを持つ。

ノバランド (NVL)

業種:不動産
時価総額:150.76兆ドン

ベトナムの大手不動産デベロッパーのひとつ。ホーチミン市と周辺省に主要開発地域を保有しており、中価格帯の物件開発に強みを持っている。

ナムロンインベストメント (NGL)

業種:不動産
時価総額:18.84兆ドン

中所得者向けの住宅開発に強みを持つ大手住宅デベロッパー。ホーチミン市とその周辺を中心土地を保有、物件の開発販売を行なっている。また、日本の阪急阪神不動産などと共同で不動産開発を進めるなど、海外企業との連携も目立つ。

FLCグループ (FLC)

業種:コングロマリット
時価総額:8.52兆ドン

ハノイ市を拠点に不動産、リゾート開発を中心に事業を展開している民間コングロマリット企業。本業の不動産事業のほか、同社100%出資の航空会社、バンブー航空を通じて航空関連事業も行なっている。

ビグラセラ・コーポレーション (VGC)

業種:建材
時価総額:20.85兆ドン

ベトナム最大の建設資材メーカーだが、1998年から不動産事業に参入。直近は工業団地運営業務を拡大している。サムスン電子の携帯電話端末工場は主力テナントのひとつ。

ホーチミン市インフラ投資 (CII)

業種:建設
時価総額:8.14兆ドン

ホーチミン市を中心にインフラ開発を行なっている。建設、道路・橋梁、水道、サービス、不動産の5事業に特化する企業を傘下に持つ。主力のインフラ関連事業に加えて、浄水場、駐車場、ごみ処理などライフライン分野の投資も行っている。

コテコンズ建設 (CTD)

業種:建設
時価総額:7.78兆ドン

民間ゼネコン大手で、住宅、商業施設など不動産開発物件の開発販売をを幅広く行なっている。高層ビルの地盤工事や地下建設工事の定評があり、「ランドマーク81」など多数の高層プロジェクトを受注している。

ホアビン建設 (HBC)

業種:建設
時価総額:7.10兆ドン

国内中堅建設会社で、設計から施工までワンストップで提供している。一般建設分野においてブランド力が高く、サングループ、ビングループ、ノバランドなど、大手デベロッパーと密接な関係を持っている。

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ライター

明松 真一郎

アイザワ証券 投資顧問部

明松 真一郎

1990年平岡証券(現アイザワ証券)に入社。加古川支店でのリテール営業を務めた後、ディーリング部、営業本部、生駒支店でのバックアップ部門などを経験。2005年に証券アナリスト資格取得したことを機に、市場情報部(当時投資リサーチセンター)に異動。アセアン株を中心としたアジア株の調査、分析を行う。その経験を経て、現在は投資顧問部に所属。

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