外国株を買う前に知っておきたい円高・円安の仕組み
2021.12.24 (金)
本講義では、円高・円安などの為替について説明していきます。
ニュースなどでよく耳にする「円高」と「円安」。
しかし、「円高(または円安)になるとどんな影響があるんだっけ?」と思ったり、あるいは「円高と円安、どっちがどっちだっけ?」と思ったりすることがあるのではないでしょうか。
今回は円高・円安について今後間違えないように解説したいと思います。
為替とは何なのか?
為替とは、通貨を別の国の通貨に替えることを言います。
日本では円が使われており、日常生活において「お金」といえば自ずと「日本円」で計算されますが、外国にはドルだったりユーロだったり、元、ペソ、リラ、リンギ、ランド……などたくさんの通貨が存在しますし、例えば同じドルでも米ドル、香港ドル、オーストラリアドルなど様々な種類が存在しています。
そして、様々な株式が日々値動きをしているのと同じように、各通貨間の為替の動き(為替レートと言います)も絶えず変動しています。
日本では日本円を「円貨」、海外の通貨をまとめて「外貨」と呼んでいます。
3年生の記事では外国株について解説していますが、外国株の取引にあたってこの為替の話も避けて通ることができません。米国なら米ドルで、香港なら香港ドルで、タイならタイバーツでというように、外国株を保有する際に一旦外貨に切り替えることになります。つまり、外国株では「株価」と「為替」の二重で値動きが発生するのです。そのため、株価が上昇していても為替の影響によって結局損になってしまっているということもあり得ますし、逆に株価と為替のダブルで資産が増えているということもあり得ます。
ちなみに、為替レートも常に変動していることから株式などを買わずに、通貨の売買のみで利益を取ろうとする取引方法もあります。これが、広告などでよく目にする「FX」です(外国為替=Foreign eXchangeに由来しています)。
円安・円高のイメージの仕方
具体的に円安・円高が進むとどのような影響があるのか?ということを説明をする前に、まずはイメージの説明をしたいと思います。わかりやすいイメージのために、お金のことを一旦忘れて、モノで説明します。
例えば、りんご2個を持っている人と、バナナ2個を持っている人がいるとします。そこで、バナナを持っている人が「1個交換しよう」と持ち掛け、りんごを持っている人も快く応じるとします。
次に、りんご2個を持っている人と、バナナ6個を持っている人がいるとします。同じように「1個交換しよう」と持ち掛けられたら、2個に対しての1個と、6個に対しての1個の交換では不平等だと思い、交換するのを拒んでしまうかもしれません。
しかし、今度は6個のバナナのうち、「3個と交換しよう」と持ち掛けられたらどうでしょうか。2個に対しての1個と、6個に対しての3個であれば、同じ価値同士の交換だと判断し、持ち掛けに応じることもあり得ます。
このように、同じりんごとバナナがあっても、状況によって等価交換と判断する個数が変わってきます。上の例では、バナナの個数が増えたことで1個当たりの価値が下落し、相対的にりんご1個の価値が上昇したことを意味します。
これを為替チックに言うと、「りんご高・バナナ安」となったと言えるでしょう。
このことを通貨に当てはめると、複数の通貨間での価値が常に変動しており、その結果として為替レートが常に変動していくという重要な考え方となります。
とは言っても、円高・円安が進む要因は、上で示したモノの例え以外にも様々あります。先ほどのバナナの増減の例は、実際の経済用語に当てはめるとマネーストック(かいつまんで説明すると、世の中に流通している通貨量のことです)に絡む話ですが、他にも景気や物価の動向、国としての信用力、海外との金利差などのほか、例えば米ドルが売られたらその資金の行き先として円が買われるなど、国内・国外の様々な要素が複雑に絡み合った結果として円高・円安はもたらされます。そのため、為替の動向を正確に把握して上昇・下落を予想するのは、個別の株式の動向を予想するよりも難しいかもしれません。
円高・円安が進むとどうなるのか?
1. 円高が進行したとき
円高が進行すると、1円ごとの価値は上昇します。この時、海外から何かモノを購入する際、同じ1円でもより多くのものが買えるようになります。1,000米ドルのモノを買う場合、1米ドル=100円の場合100,000円かかりますが、1米ドル=80円になると、80,000円で済むようになります。このことから、原油や天然ガスなどを調達するエネルギー会社や、海外産の牛肉やコーヒー豆などを輸入する飲食店など、海外から仕入れて国内で製品やサービスを展開する企業の利益が上がりやすくなります。
同じように、外貨を買付する際も、円高の方が買付資金は安くなります。
2. 円安が進行したとき
円安が進行すると、1円ごとの価値は下落します。円高とは逆に1円で買えるものは少なくなり、1,000米ドルのモノを買おうとしても、仮に1米ドル=120円になると120,000円かかることになり、割高となります。一方で、国内から海外にモノを売るときに、同じモノでも1個あたりに貰える円の量が増えることになります。このことから、自動車や半導体・電子部品など多くを海外へ輸出しているメーカーや、海外でもサービスを広く展開しているゲーム会社など、国内で生産した製品やサービスを海外へ展開する企業の利益が上がりやすくなります。
無論、外貨は売却する際に売却資金が高くなります。
上で示した通り、円高・円安の影響は決して外国株を保有する時に限りません。国内の企業にも関わるということは、業績、ひいては株価の上下に繋がりますし、さらには私たちの日常生活にも密接に関わる重要なファクターとなります。仮に外国株を保有しないとしても、日経平均などと一緒に米ドル・円の推移もチェックするとよいでしょう。
とりわけ、日本は製造業が強く、輸出によって利潤を得ている輸出国であるため、円安による恩恵が大きいと言うことができます。
今回、なるべく平易に説明するために為替のことは米ドル・円のことを中心に話しましたが、もちろんユーロ・円、ベトナムドン・円、香港ドル・円などそれぞれの為替レートがあり、それぞれが独立して変動しています。もし外国株式などの海外資産を保有する際は、米ドルのみならず、該当資産の為替レートもチェックするようにしましょう。
さて、円高・円安の仕組みを学んだところで、次回の講義では外国株の買い方について学んでいきます!
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