コリアインサイト コロナ鎮静化で消費パターンに変化の兆し?
2022.06.27 (月)
コロナ鎮静化で消費パターンに変化の兆し?
韓国では今年3月、新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数が一時40万人程度まで増加しました。しかし、足元は1万人を下回る日が多くなりつつあります。さらに、ワクチンと感染によって新型コロナウイルスの抗体ができた国民の割合は94.9%との調査結果も出ています。
4月18日からはソーシャルディスタンス規制が大幅に緩和され、5月2日には屋外でのマスクの着用も自由になりました。これにより、オンラインショッピングやデリバリーなどを利用して、自宅にこもって生活してきた消費者たちの購買意欲が一気に解放されそうな雰囲気で、実際にオフライン消費の増加の兆しも見えています。
今回は、コロナ禍とそれを背景に急拡大しているオンラインショッピング市場の影で苦戦してきた、百貨店業界の現状を見ていきます。
百貨店の戦略が変わった
5月初めの休日と週末、久々に大勢の人がテーマパークや観光地、ショッピングモールを訪れ、中でも百貨店の売り上げは前年同期に比べて大幅に増加しました。今年下期からは海外旅行も再開されるため、より外出する人が増える見通しです。
一方で、ショッピングだけではなく場所そのものを楽しむ人々が増えるなど、例年とは違うトレンドも見られました。例えば、ブランドのポップアップストアや展示会、公演、グルメ体験などを目的に訪れた顧客による売り上げが伸びています。
現代百貨店は、昨年、汝矣島に新しくオープンしたソウル最大規模の百貨店「ザ・現代ソウル」で、複合文化スペースの「ALT.1」を運営しています。ここではアンディ・ウォーホル展やTeresa Freitas(テレサ・フレイタス)の写真展などが開催されました。また、新世界百貨店は、江南店にアートディーラーが常駐するアートスペースというギャラリーをオープンしました。ここでは、展示されている作品を購入することができるほか、コンサルティングを受けることができます。
このように、百貨店では最近、コンテンツの強化によって集客を図っています。
注力品はブランド品から多様化
コロナ禍において、海外ブランド品を買うチャネルは国内の百貨店に限られていましたが、今後海外旅行の再開により、免税店や海外などに選択肢が広がっていく見通しです。百貨店にとっては海外ブランド品の販売手数料は低いうえに、売り上げの鈍化が見込まれることから、他の商品に注力していくことが予想されます。
一方で、アパレルや食料品は利益率が高く、対面販売の回復による恩恵が期待されます。特に若者向けのアパレルと食料品の売り上げ拡大が見込まれます。
百貨店の逆襲か?
コロナ禍を背景としたオンライン消費の拡大により、百貨店の対面販売は厳しい逆風にさらされ、生き残ることで精一杯でした。しかし今後は、百貨店は対面販売と自社ECサイトでの販売の両輪により、収益の急回復が期待されます。来店客の正常化や、祝日効果などに加えて、店舗をオンライン配送の拠点として活かした物流コストの削減も期待されます。EC業界に押され気味であった百貨店業界の逆襲が始まるでしょう。
現代百貨店は昨年7月に、プレミアム食材やベーカリー、スイーツなどを顧客宅に配送するサービスを開始しました。また、新世界百貨店は系列会社のSSGドットコムと連携し、自社ECサイトの新世界百貨店モールに2000のブランドを誘致しました。中でも30のブランドは新世界百貨店単独の誘致となっています。
コロナ禍がエンデミックを迎えつつある今、小売り業界の変化も速いスピードで進んでおり、特に百貨店の変身が注目されます。
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