ザ 語源 第22回 ボーナス(賞与)とサラリー(給料)
2023.06.02 (金)
ボーナス(賞与)とサラリー(給料)
6月は「ボーナス(賞与)」の支給月です。日本の企業では「ボーナス」は6月と合わせ12月も毎年定期的に支給されることが多いのですが、海外企業では大きな利益を計上した時に「ボーナス」が支給されるなど日本とは少し異なる点があります。
日本で最初の「ボーナス」は1876年、三菱グループの創設者である岩崎弥太郎によって支給されました。当時、三菱グループの主力事業である海運業において海外企業との熾烈な競争に打ち勝ったご褒美として支給されました。
日本の企業の夏季と冬季に2回、定期的に「ボーナス」を支給する慣行は江戸時代の「お仕着せ(おしきせ)」が始まりと考えられています。商家に住込みで働いている奉公人や丁稚(でっち)に盆と暮に里帰りの際に「餅代(もちだい)」として新品の着物かもしくは多少の金銭を支給していたので「お仕着せ」と呼ばれるようになりました。
本題の「ボーナス」について解説します。
「ボーナス」は英語で「bonus」です。「bonus」はラテン語の「ボヌス(bonus):良い」が語源です。「bonus」は古代ローマ神話における豊穣と成功を司る女神「ボヌス・エヴェントス(Bonus・Eventus)」が語源と考えられています。フランス語では「良い」や「いいね」は「セ・ボン」、「こんにちは」は「ボンジュール(良い日)」、またイタリア語では「おいしい」を「ボーノ」などと言いますがこれは「ボーナス」と同一の語源です。
「ボーナス」に対し、会社員が毎月勤労の対価として受け取るのが「給料」です。「給料」は英語で「サラリー」です。「サラリーマン」は「給料」を受け取る人という意味ですがこれは和製英語です。
「salary:サラリー:給与」はラテン語の「sal:サル:塩」(英語は「salt:ソルト」)もしくは「salarium:サラリウム:塩代(給料)」が語源です。その起源は古代ローマ時代まで遡ります。
当時ローマ軍は兵士に対する報酬として「塩」を支給していました。「塩」は人体の維持に不可欠の要素です。また「塩」は内陸部では精製と生産を行う元となる海岸から離れているため、確保が困難という点がありました。従って、時の為政者や権力者にとって「塩」は専売にして領民に税金を課すなど領土経営における重要な財源の対象でした。米などの穀物と同じように一定期間の保存が可能であることから物品交換の手段、つまり通貨として使用されることもありました。
「salt:塩」と同じ語源をもつ言葉として「salad:サラダ」、「sauce:ソース」などがあります。著名な作曲家のモーツァルトが生誕したのはドイツの「ザルツブルク」ですが「塩の城」が語源です。
古代ローマ時代の兵士に「お金」の代りとして支給されていた「塩」は次第に本物の「貨幣」で支給されるようになりました。これが「ソリドゥス金貨:Solidus」です。
「ソリドゥス金貨」は4世紀、時のローマ皇帝であるコンスタンティヌス1世により鋳造されました。ヨーロッパにおける「ソリドゥス金貨」の流通は11世紀までおよび、中世ヨーロッパの「ドル」と呼ばれるようになりました。ちなみに今日の世界的基軸通貨である「ドル」の記号が「D」ではなく「$」なのは「ソリドゥス金貨」が由来の一つと考えられています。
給料を「塩」でもらっていたローマ兵士は「ソリドゥス金貨」を得るため働くことになりましたので「サラリー」を得るために働く人を「サラリーマン」と呼ぶのと同じように、兵士のことを「ソリドゥス金貨を得る人」と呼ぶようになりました。これが「兵士」の英語「ソルジャー:soldier」の語源となりました。
健康維持のため塩分控えめの食生活を求められる中高年サラリーマンの語源が「塩を求める人」というのはなんとも皮肉なものです。
※本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。
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