【経営者向け簡単解説シリーズ】 ストックオプションを簡単解説!第3弾
2020.09.14 (月)
はじめに
アイザワ証券では、従来の証券会社とは異なる特徴的な証券会社として「超リテール証券」を掲げています。これは、資産運用のサポートにとどまらず、相続手続きのサポートや法人のお客様・経営者様に向けたビジネスサポート等、多彩なソリューションをご提供することで、従来の証券業の枠を超えてお客様の課題解決をお手伝いするという意味で用いています。
今回は、インセンティブプランとして一般的な「有償ストックオプション」についてご紹介したいと思います。ストックオプションについての基本的な解説も第1弾の記事でご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。(第1弾の記事はこちらから)
有償ストックオプションとは?
さて、前回の記事では、ストックオプションは大きく分けて「無償」か「有償」か、という点で大別されるということでした。また、無償ストックオプションのうち税制適格ストックオプションについてご紹介いたしましたが、無償ストックオプションでは、ストックオプションを無料で役員や従業員(以下、「付与対象者」)に付与するというものでした。
対して、今回ご紹介する有償ストックオプションは、その名の通り、付与対象者が一定金額を支払ったうえで与えられるもので、資金負担がある点が無償ストックオプションと大きく違う点になります。
ストックオプションは、無償・有償にかかわらず、従業員のモチベーションアップや優秀な人材の確保・流出防止などのために発行されますが、無償の場合、無料で与えられるが故に、付与対象者によっては、ストックオプションに関心が向けられず、その制度・導入の背景が伝わっていないままのケースも見受けられます。
一方、有償であれば、ストックオプションを購入するために、付与対象者自身の決断で自社の株式(を購入する権利)にまとまった資金を“投資”することから、「何だかよくわからないけど、無料でなんかもらえた」というような心理状態にはなりえませんので、上記のようなストックオプションによるメリットを無償ストックオプションよりも享受しやすいといえます。ただし、まとまった資金を負担する必要があるということは、資金の用意のある人物に付与対象者が限られるということでもあります。行使を制限するような条件(業績達成条件など)をストックオプションにつけることで、資金負担を軽減することも可能です。
しかし、発行価額を必要以上に引き下げてしまうと、付与対象者に経済的利益が発生したとみなされ課税されるリスクがありますので、事後もきちんと説明できるようにストックオプション評価の専門家による価値算定などの準備が重要になってきます。
有償ストックオプションの税金
ストックオプションの保有者は権利行使をして株式を取得し、株式を売却すれば利益を得ることができますので、その場面に応じて課税がされます。無償ストックオプション(税制非適格)では、当該ストックオプションが会社からの給与・報酬とみなされるため、付与対象者に経済的利益が発生していると解釈されます。そのため、付与対象者には、権利行使時と株式売却時に課税がされることになります。
一方、有償ストックオプションは、付与対象者が現金を払い込むことによりストックオプションを取得するスキームであるため、給与・報酬ではなく、投資にあたり、なんら経済的利益を受けていないことから、権利行使時には課税はされず、株式売却時に課税されるのみになります。
ただし、前述の通り、有償ストックオプションが公正価値(公正な評価額)に基づいて発行されていない場合には、経済的利益が発生したとみなされ、ストックオプションの取得時に課税されるので、公正価値評価をきちんと取得することが重要になります。
税制適格ストックオプションの課題と有償ストックオプション
さて、前回ご紹介した税制適格ストックオプションと有償ストックオプションのメリット・デメリットについて、これまでご紹介した部分に限りまとめてみました。ここでは割愛させていただきますが、下記にまとめた以外にも、法律面(発行決議機関・役員報酬決議の有無など)・会計面でのメリット・デメリットもありますので、導入に際しては、様々な側面からの検討が必要でしょう。
まとめ
さて、今回は有償ストックオプションについての概要を簡単にご紹介しました。税制適格ストックオプションは、付与対象者の税金負担が小さいことから、また、適格要件上、所有株式数の制限要件があり、オーナー経営者が税制適格の要件を満たしていることは少ないことから、どちらかと言えば、従業員に対して付与するストックオプションとして適しているといえそうです。
一方で、有償ストックオプションは、取得時にまとまった資金の用意が必要になるものの、税制適格要件のような制限はありません。給与や報酬というよりも投資という位置づけのため、付与対象者の心理的な効果も期待でき、また、税務面でも譲渡所得に関する課税のみのため、税制適格ストックオプションではカバーできない役員クラスの人物に対して付与するストックオプションとして適しているといえそうです。
ストックオプションの種類は様々ですが、その発行する目的に応じて、どういった内容のストックオプションを発行するかが異なりますので、ストックオプションを導入するにあたっては、目的に見合ったストックオプションを選択し、適切にストックオプションの活用をするようにしましょう。
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