経営者インタビュー ご当地ラーメンの最高峰!進化する日本ラーメンの新たなトレンド<前篇> クラタ食品有限会社
2020.04.06 (月)
ご当地ラーメンの最高峰!進化する日本ラーメンの新たなトレンド<前篇>
クラタ食品有限会社(広島県福山市)は、広島県、岡山県をメインエリアに、中国、四国地方などにも麺類全般商品を供給している麺類メーカーです。同社は「福山らーめん」、「広島らーめん」等のご当地生ラーメンをはじめ、50品目を超えるオリジナルラーメンを開発しており、西日本では1番のご当地(ご当店)ラーメン商品を持つ昭和62年創業・33期目の製麺会社です。
本物志向のラーメンを作る一方で、地元広島県東部の学校給食での麺類提供で高シェアを占めており、また、人気ゲームシリーズ「龍が如く」とのコラボレーションもしています。
昨年には輸出商材として海外で増加傾向にあるヴィーガン(完全菜食主義者)向けに動物性食品不使用のヴィーガラーメン開発・販売も手掛けている非常にユニークな会社です。今回はそんな同社が手掛けるラーメンビジネスについて、代表取締役である倉田安彦氏に話を伺いました。
―― ビジネスを始めたきっかけをおしえてください。
倉田代表(以降、倉田):
実は当社の前身は祖父がつくった倉田製麺株式会社です。祖父が亡くなった後、父が事業を引き継ぎ、拡大させて地域一番になったのですが、複数の友人の債務保証人のトラブルから資金繰りが一気に悪化したため、私も家業の手伝いをすることに急遽なってしまいました。
当時、私は京都で大学3回生が終わる頃でしたが、大学と相談して、単位も取れていたため大学には来なくても良いという条件だったので、地元に戻り家業を手伝いました。しかし、残念ながら大学卒業した年の4月には、会社が倒産し、父が失踪。保証人になっていた母や祖母、親戚一同を助けるため、家業を引き継ぐことを決意しました。立て直しのため社長になり奔走しましたが、その1年後、前会社は清算、24歳で新しい会社(現在のクラタ食品有限会社)を設立し、改めて製麺業経営者としての覚悟を決めました。
―― 最初どのような点に苦労されましたか?
倉田:
資金繰り悪化を解決することからはじめましたので、各取引先様との交渉も社会人1年目の私がしなくてはならない状況でした。もちろん、それまで経営陣であった親戚の専務・常務もいましたが、状況が状況でしたので、覚悟はできず、最終的には自分が適任だと思い、全面に立つことにしました。倒産し会社の信用がなくなったということですので、取引先を1件1件回って事業の説明をし、これからも継続的に取引をしてもらえるように承認を得ることが一番大変でした。
つまりすべての取引先様にご援助をいただき助けていただいたのです。
―― ラーメンビジネスを始めた、経緯をおしえてください。
倉田:
当時、うどん、ラーメン、中華そば、日本そばなど、さまざまに手掛けておりましたが、うどんが主力の会社でした。しかし、地方スーパーにも関西や福岡といった大都市からの商品が当然にやってくるようになり、安売り時代に変わってきました。しかも、うどんやそばは味よりも、地域ブランド(例:讃岐うどん、出雲そば等)で選ばれる傾向がありました。
一方で、ラーメンは、それぞれの地域・町ごとに味が違うことに着目、味で勝負ができるラーメンを主力に舵を切ろうと考えました。
―― その後、海外に事業を広げられておりますよね?きっかけは何だったのですか?
倉田:
中学から歌謡曲が嫌いで洋楽しか聞いてなかったのが一番でイギリスに憧れ、大学3回生の夏に1ヶ月程アメリカ留学中の先輩を訪問しました。その時、英語でのコミュニケーションの楽しさや外国人との異文化交流等、人種のるつぼを体験し、将来は海外でもっと勉強をしたいと思いながら帰国しました。その半年後に突然、家業に係ることになったわけです。
会社を設立し、事業が軌道にのりはじめ、そのあとやっと海外で事業をするチャンスを得ました。会社を作って15、6年後、40歳ぐらいの時でした。会社に余裕が出てきた時期で、ご当地ラーメンの開発を推し進め、会社のホームページを作成し販路を拡大しようとしていた時期です。
香港から1本の電話がかかってきました。1回目は不在だったのですが、香港からの電話だというので、「どうせ投資か何かの怪しい話だろう」と思い本気にしませんでした。しかし3回目にして、偶然、電話を取りました。なんと、香港にある貿易会社が当社のホームページを見て、「これだけラーメンの取扱いがあるのは地方では御社しかない。」と声をかけてくれたのでした。しかもその会社は、日本の大手小売チェーンであるユニーが初の直轄海外事業として立ち上げたユニー香港でした。
その後、自分達の商品を香港で販売したいということで話が進み、ユニー香港が最初の輸出の入口になり、現地スーパーに商品を並べることができました。
後編(次号)では、海外ビジネスで気をつける点や今後の展開について伺います。