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亜州潮流 

2024.10.28 (月)

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ベトナムのドリアン栽培ブーム

「ドリアン」は、独特な香りと味を持つ熱帯フルーツとして知られている。2023年の全世界のドリアンを91%も消費した国は中国である。中国人にとって、ドリアンはフルーツという認識を超え、高い栄養価と希少性から「身分の象徴」としての意味合いを持ち、高額で取引されている。中国最大規模の農産物専門卸売市場である新発地卸売市場では、2024年3月に、ベトナム産が平均800円/kg、タイ産は同1000円/kg、マレーシア産が同4000円/kgで取引された。

2023年の中国のドリアン消費量は前年比70%増の140万トン。ドリアンブームに乗じて、海南省を中心にドリアン国産化を試みたが、2023年の収穫量はわずか50トン。中国産ドリアンは輸入品に比べ風味が劣る上に、価格が24002900円/kgと高い。2022年に中国に輸入されたドリアンは、タイ産が95%のシェアを占めた。しかし、2022年9月から中国がベトナム産ドリアンの輸入を許可したため、翌年にはタイ産のシェアが67%に低下、ベトナム産が32に急増した。

[中国税関総署の統計データにより、アイザワ証券作成 ]

ベトナム産ドリアンの強み

タイ産のドリアンは、カンボジアと国境を接する東部州とマレーシアと国境を接する南部州で栽培され、東部は36月、南部は610月にかけて収穫される。一方、ベトナム産は、メコンデルタ、東南部、中部高原の3つが主要な産地である。特にメコンデルタは、特殊な開花処理により一年中収穫ができる。またドリアンは収穫後の乾燥処理や鮮度により風味が大きく変わるが、ベトナム産のドリアンは品種・加工技術の違いにより、タイ産に品質面においてやや劣るものの、運送期間が最短2日と短く、輸送コストも安いなどメリットがある。

ドリアンドリームが膨らむも過剰栽培に警戒感

そのためベトナムでは、ドリアンの栽培面積が2021年の8.4万haヘクタールから2023年には15万haへと2倍近くに増加した。ドリアンは苗木を植えてから収穫まで平均5-6年間かかり、現在は栽培面積の半分が収穫可能であり収穫量は120万トンに達した。うち4割は中国に輸出されており、中国の需要や、タイの収穫状況により価格変動は激しい。しかし、ドリアン栽培はハイリターンが期待できる。1ha当たりの初期栽培費用は平均470万円、年間収穫量は同16トン。ドリアン買取り価格が300円/㎏と想定しても、1年で初期用を回収できる見通しとなる。例えば2023年の平均買取り価格である590円/kgで計算すると、ドリアン栽培の予想収益は820万円/haとなり、コーヒーの同120万円/ha、ドラゴンフルーツの同90万円/ha、マンゴーの同60万円/ha、米の同18万円/haを上回る。そのため、政府が警告しているにもかかわらず、農家がコーヒーや胡椒、他の果物からドリアンへ転作する事例が絶えない。またドリアンの栽培ブームは大手農業企業にも広がっており、今後需給関係に与える影響が注目される。

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