投資のコンシェルジュ 第2回 日本はインフレへ突入で、株価は大きく上昇するのか!?
2021.12.20 (月)
第1回では、日本のインフレ(物価の上昇)が円安を引き起こす可能性とそれにより物価に対してお金=「ゼロ金利預金」の価値が目減りする、考え方に触れました。(前回の記事はこちら)
今回は、インフレで株価が大きく上昇する、という見方をご紹介します。
米国で39年ぶりの物価上昇を記録
12月10日に発表された米消費者物価指数(CPI)は、前年同期比で+6.8%と、10月6.2%から加速、オイルショックの頃から約39年ぶりの高水準を記録し、金融市場の大きな話題になりました。なんといってもガソリン、同約60%の上昇、中古車が31.4%、食品は6.1%。
日本も、インフレが始まっている
先程の話は海を渡った米国の話で日本は関係ない!?そうでもありません。海外から輸入するガソリンや食品は、日本でも物価が上昇しているはずです。そこで、日本の物価について、全国比で恒常的に高い「東京都」を例にみてみます。
足元は、新型コロナ感染拡大による経済封鎖等により、表にはありませんが、2020年10月からマイナスに陥ったものの、今年の8月から再びプラス圏へ浮上。それでも、11月は+0.5%と米国に比べ迫力に欠けますが、レギュラーガソリンは1年前から3割近く、ホテルなど宿泊費は6割近く上昇しています。それでも小幅上昇なのは、指数算出時に各品目の影響度からウエイト付けされているからです。
例えば、電気代は同13.1%上昇していますが1万分の262(0.0262)を掛けた「0.32%」が“寄与度”となります。そして、日本の物価上昇の足枷となっているのが、携帯電話料金など“通信”費で、寄与度は-1.15%と非常に大きい。これがなければ、単純に1.5%水準で、「バブルの頂点」と言われた1989年の前後と同水準。通信費はこの1年でも33%低下していますので、前年同期比でみた数値は次第に沈静化、その一方で、他の物価は上昇傾向ですから、近い将来、日本を含む先進各国のインフレ目標である2.0%を達成する可能性もあるわけです。
本編「第1回」をご一読頂いた方にはお分かりかと思いますが、物価上昇(インフレ率上昇)は、「モノ」に対して「お金」の価値が下がること、ゆえに、日本のお金「円」の価値は構造的に下がりやすく、ドル高円安の長期トレンドが説明できます。
それは、「円の価値が下がる≒現金及びゼロ金利の預貯金の価値が目減りする」ことが起こるということです。そこで、「目減り」を回避すべく、考えたいのは、株式など「リスク資産」への投資です。
今回は「株式投資」へ照準を絞ります。
インフレが株価を押し上げる!?
今さらですが、インフレは「物価が上がること」です。そして、それは、おおよそ、中長期で見て「株価が上がること」とも言えそうです。
前出の《図1》に、日経平均株価(指数)の騰落率を重ねたものが《図2》です。
日本の高度成長期(1970年代)にあたる1971から平成バブル末期の1990年までは、インフレ率が高くまたはプラスの期間が続き株価は順調に上昇。そして、1991年、同バブル崩壊以降次第にインフレ率が低下、2000年前後のITバブルの株高は短期間で収束した為、物価への波及は限定的。その後、インフレ率がマイナス=デフレ期に入り、2010年までの株価の下落傾向は鮮明に。
そこで、2012年12月、デフレ脱却を目指した第二次安倍政権の「アベノミクス」が始動。「三本の矢」政策(財政出動・金融緩和・成長戦略)により、物価は再び上昇、株価も上昇に転じています。
2001年から2005年、小泉「構造改革」内閣は、一方ではデフレ要因ながら株価が好評価をみせましたが例外的で、概ね、インフレ期に株価が上昇している傾向が浮かび上がります。
なぜ、インフレ期に株価が上昇するのか?
資本主義経済における経済成長=株価上昇には、ほどよいインフレが必要と考えられます。
その理由として、
などにより結果的に経済が活性化し、株価が上昇しやすいと考えられます。
(本編では、原材料価格等の上昇・下落は関係しない前提で説明しています。)
「例1」は、適度なインフレ(だけではありませんが)により、経済が活性化し、株価が上昇するメカニズムを説明したものです。
すると、
- AZ社は「学習机タイプA」の改良型「学習机タイプB」開発へ売上増加分500万円を投資。開発委託先のBZ社とCZ社の売上も増加する結果に。
- 一方で、業績好調により社員の給料を5%引き上げ。物価は1年で1%上昇しましたが、社員は給料が増えて消費に積極的です。
- AZ社株価は、売上伸長が好感され1,500円へ上昇、BZ社やCZ社の株価も上昇しています。
物価が上昇する世の中では、「例1-1」では、AZ社の好況が新規投資を通じてBZ社・CZ社へ波及、「例1-2」では、社員の積極的な消費が景気を浮揚し、そして、「例1-3」では株価上昇という連鎖が起こりやすいと考えられます。
では、物価が下落する=デフレではいかがでしょうか。
などにより結果的に経済が停滞し、株価が下落しやすいと考えられます。
「例2」は、デフレ(だけではありませんが)により、経済が停滞、株価が下落するメカニズムを説明したものです。
すると、
- AZ社は「学習机タイプA」の改良型「学習机タイプB」開発を中断、開発委託先のBZ社とCZ社の売上は両社計画より減少する結果に。
- 一方で、業績不調により社員の給料を5%引き下げ。物価は1年で1%下落しましたが、社員は購入を先送りして値下がりを待つ、保守的な消費行動を取るようになりました。
- AZ社株価は、売上減少が嫌気され800円へ下落、BZ社やCZ社の株価も下落しています。
物価が下落する世の中では、「例2-1」では、AZ社の不況が新規投資を封じてBZ社・CZ社へ波及、「例1-2」では、社員の保守的な消費により景気は減退、そして、「例1-3」では株価下落という連鎖が起こりやすいと考えられます。
日本の株価上昇が始まっている!?
日本のインフレ率は、《図1》の通り2021年9月からプラスに転じ、米国など世界各国のインフレ率が上昇する中で、トレンド化する可能性が高いとみられます。「第1回 日本の1,072兆円へ迫る!インフレと運用の必要性/ドル円相場の見通し」でご報告の通り、円安の進展は輸入物価の上昇につながりますから、インフレの大きな要因です。
《図3.日経平均株価》をみると、2020年2月下旬からの“コロナ・ショック”を経て、ショック前より水準を大きく切り上げた日経平均は、2021年の揉み合いで下値を固めて上値を窺うようにもみえます。現状はデフレ脱却、程度のインフレ率ですが、物価上昇が常態化し、さらに同率の上昇を織り込みながら、中長期的な上昇トレンド入りする時期は近づいているとみています。
次回、「第3回」では、「インフレが始まった日本の株式市場が大幅高となる可能性」についてご報告させて頂く予定です。
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