アジア株週間トピックス 2023年5月2日号
2023.05.02 (火)
アセアン各国は自動車関連投資を本格化
アセアン各国は自動車関連産業を強化か?
4月25日、ジェトロ(日本貿易振興機構)が「アジア新興国の自動車市場の現状」に関する調査レポートを公開しました。近年は世界的なサプライチェーンの混乱や地球温暖化などが社会問題として取り上げられています。直近、世界各地で開催されている自動車ショーや国際イベント、政策などを参考に、新興国(タイ、インドネシア、ベトナム)の直近の状況、取り組みを確認したいと思います。
国別の取り組みと今後
タイの取組み
2015年あたりからタイ政府は「タイランド4.0」と名付けた産業高度化政策を国家の重要指針として取組んでいます。この「タイランド4.0」では食品、バイオ、医療など12の産業を指定し、重点分野として強化しようとしています。
注力している分野のひとつが自動車です。タイ工業連盟(FTI)によると2022年の生産台数は188.3万台(前年比11.7%増)と、回復基調が目立っています。
特に力を入れているのがEVです。タイ投資委員会(BOI)が2022年2月に発表したEV振興策では、国内でEVを生産する企業に対して、3~8年間の法人所得税免除、補助金の交付などの優遇策が発表されています。国内で進行している高齢化、人手不足が顕著になっているタイではEVが大きな武器になると思います。
インドネシアの取組み
インドネシアでは、2022年に国産の電気自動車の商業生産が本格的に始まりました。インドネシア自動車販売市場に占める日本のシェアは9割超ですが、特筆すべきは低炭素排出車(LCEV)において、中国、韓国メーカーの存在感が高まっていることです。
なお、今年5月に実施される「ASEANサミット」では、国内外の主要メーカーがオフィシャルカーとして提供する、と表明しています。現代自動車117台、トヨタ65台、BMW13台などです。各社のEVアピールが目立ちます。今後、関連企業のシェア争いがさらに強まりそうです。
とはいえ多くの課題があることも事実です。今後さらに普及を進めるためにはEV車両価格の引き下げや充電ステーションの増設などが急務となっています。直近は、ジャカルタ首都圏のホテルやモールの駐車場に充電ステーションを設置する、という動きもありますが、このたびのASEANサミットを機にEV普及、充電設備の増設が本格化するとみています。
ベトナムの取組み
ベトナムの自動車市場はタイやインドネシアにくらべて規模が小さいものの、生産・販売台数は着実に増加しています。一人当たりGDPは4,000ドル乗せの水準になっており、モータリゼーションが進みやすい段階といえます。
ベトナムの自動車エーカーとしてはビンファストが挙げられます。ビンファストは2022年1月にガソリン車の生産、同年半ばからEV生産に一本化することとしました。ビンファストは未上場ですがベトナムを代表する企業である「ビングループ」の傘下企業です。ビンファストの動きには、ベトナム政府の意向がはたらいていると思われます。
今後、国家主導でEVの普及戦略が繰り広げられそうです。世界的なEVシフトの動きは、ガソリン車の生産で他国に遅れをとっていたベトナムにとってチャンスになり得るという側面もあります。ビンファストに次ぐ自動車メーカー、関連企業が出てくる可能性もありそうです。
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