以新伝心 憎しみ・悲しみの連鎖 ~殺不の重要性~
2024.01.08 (月)
当記事は2023年12月11日発行「アイザワ・グローバルマンスリー12月号」より抜粋しております。
「アイザワ・グローバルマンスリー」は「投資情報サイト」へ掲載しております。
憎しみ・悲しみの連鎖 ~殺不の重要性~
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻、両国間が戦争状態となった。2023年10月にはパレスチナ自治区を拠点にするイスラム過激派のロケット弾攻撃により、ハマスとイスラエルの戦争が始まった。立て続けに行われる国家・地域間の武力行使による凶行は、悲しみと憎しみの連鎖を引き起こし、世界を巻き込み様々な論争がなされている。
現在、それぞれの戦争に対して各地でデモが行われているが、多くは平和的に終える一方、過激化するケースもあり、デモ隊の一部が警官に拘束される場面も見られる。武力行使に対する抗議に加え、世界には人種問題や差別、政策に対する不満など潜在要素は複数あり、きっかけがあれば爆発する可能性を孕んでいる。
国家・地域間の“戦争”は影響力が高く、日本でもセンセーショナルに報道されることから我々の認知度は高い傾向にあるが、世界各地で多く行われるデモについては、その結果”の大小により報道されないものも多い。実は2000年以降をみても、既にデモは増加傾向にある。国家による武力行使が続く流れの今、デモが増えるとなれば、やはりデモ隊の暴徒化・ヒートアップの場面が増えるのも避けられないだろう。
デモのきっかけ、過激化のきっかけになるのは何なのだろうか。やはり、そこには戦争をはじめ、人の“死”が大きく関係していると考える。2020年にアメリカで起こった、ジョージ・フロイド抗議運動は皆さんの記憶にも新しいだろう。きっかけは、ジョージ・フロイト氏が白人警官による過剰な拘束により、殺害される場面が動画で拡散されたことだ。Black・Lives・Matter”というスローガンが叫ばれ、記憶に残る印象的な事案であったが、スローガンの言葉の語源も、2012年に黒人の少年が白人の警官に射殺された事による抗議で生まれたものだ。
人の死が、憎しみと悲しみの連鎖の始まりとなることは言わずもがなだ。米国政府では、ヘイト対策のため、警官の教育に力を入れている。非致死性の唐辛子スプレーや、低致死性武器であるテイザーガン(電極を対象に射出、電子パルスを流し無力化する電気銃)を装備に導入するなど、制圧対象者の必要以上の負傷を防ぐ取り組みを行っている。一方、非・低致死性であることから、警官によるこれらの乱用も問題視され、新たな火種も抱えるなど一筋縄ではいかない。テイザーガンやボディーカメラなどのソリューションを提供するアクソンエンタープライズ(米国:AXONは、米国政府をはじめ、各国法執行機関を顧客に持ち、業績を伸ばしている。制圧武器であり、普及に思うところはあるが、銃火器や警棒を利用した制圧行為に比べ、低致死性であることや事後の後遺症が残り辛いとされ、憎しみと悲しみの連鎖を低減させられる点から評価出来るだろう。
我々人間は知性を持った生物であると自負しているが、現状をみるに、そうでもないのかもしれない。だが、感情をコントロールし、皆で共生できる“落としどころ”をどこかで見つけることが出来るはずだと、私は信じている。
※「以新伝心」は、新しい出来事に着目し、心に伝えることをコンセプトにしたコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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