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【経営者向け簡単解説シリーズ】 第3回 TOKYO PRO Marketを簡単解説!

2021.12.20 (月)

アイザワ証券 CRM部

豊福 哲矢

【経営者向け簡単解説シリーズ】 第3回 TOKYO PRO Marketを簡単解説!

2021年のIPO社数は大幅に増加!

2021年のIPO件数は、2007年以来、14年ぶりに120社を超える勢いとなっており、12月の上場社数は約30社(一日だけで7社上場する日も!)と年末にかけてIPOラッシュを迎えます。昨今、一般市場への上場だけでなく、TOKYO PRO Market(以下、「TPM」)へ上場する会社も増えており、2021年のTPMへのIPO件数は13社(前年9社)となる見込みです。

自由度の高い“上場基準”と“開示制度”で上場社数を増やしているTPMですが、当然メリットばかりではありません。今回は、TPMへ上場することのデメリットについて考えてみたいと思います。(TPM上場の特徴やメリットについては過去の記事をご参照ください。「第1回TPMの特徴とは?」「第2回TPM上場のメリットとは?」)

TPMに上場するデメリットとは?

デメリット①:市場内での資金調達や株式売却が難しい

TPMはプロ投資家向けの市場であり上場基準や開示ルールは一般投資家が参加できる他市場よりも緩やかです。他市場では上場後に一般投資家が円滑に売買できるように、一定の流通株式割合が基準で定められていますが、TPMにはそのような基準がありません。そのため、会社のオーナーがほとんどの株式を持ったまま、外部株主の参加を必要とせずに上場することが可能というメリットがあります。

以上のメリットは一方で流動性が低い(換金性が低い)というデメリットにも繋がっています。保有している株式を売却したい時に機動的に売却できないリスクが高く、そのようなリスクを受け入れることができ、更にプロ投資家である必要があることも加わり、現状では潜在的な投資家が非常に限定的です。したがって、上場前に一般市場同様に資金調達を行ったり、上場後に売買が頻繁に行われ時価で機動的な資金調達を期待しても、投資家を見つけてくることが非常に高いハードルとなっています。

現在TPMの上場社数は11月末時点で46社ですが、上場後売買が頻繁に行われている会社はなく、また、上場時に資金調達を行ったのは5社しかなく、参加投資家が限定的であることが伺えます。 

TPM上場の意思決定時には、以上のデメリットについて、メリットと天秤に諮り十分な検討が必要です。

デメリット②:未上場時点と比べると事務負担・コストが増加する

TPMに上場すると、マザーズ等の他市場への上場と同様に、「会社の信用力・知名度の向上や財務の透明性・信頼性の向上」といった上場メリットが得られます。名刺には上場企業の証として“東証ロゴマーク”や“4桁の証券コード”を入れることもできますので、営業面での取引先の拡大にも期待できます。また、形式的な基準はないものの上場会社として、コーポレートガバナンス(株主保護等のための経営監視の機能)や内部統制(法令順守、職業倫理を向上させる機能)を構築し体制を整備することが求められておりますので、TPMへの上場を目指す過程で組織力のアップにも期待できます。

一方で、上場会社として一定の会社情報をタイムリーに開示(公表)しなければなりません。また、TPMでは、他市場に上場する会社が開示している有価証券報告書に相当する「発行者情報」を作成・公表する必要があります(四半期開示は任意)。開示書類は法令および東証のルールに基づいた作成が必要であり、事務負担が増加します。併せて、事務負担に係るコスト増が見込まれます。他市場への上場と比べるとコストは軽減させることができますが、一定のコストは覚悟する必要があります。

まとめ

今回は、昨今活用が広がっているTOKYO PRO Marketの上場に関するデメリットについてご紹介させていただきました。新規上場(IPO)は経営者の方なら一度は必ず考えるものです。しかしながら、上場は経営のゴールではありません。IPOは経営を拡大させるための手段の一つです。何事にもメリットがあればデメリットもあります。上場することが会社にとって本当にベストなのかというのは、メリット・デメリットすべてを勘案した上で決定されるべきでしょう。

昨今はTPMから一般市場へのステップアップする会社も出てきています。TPMへの上場が検討候補にあれば、TPMへの上場と一般市場への上場それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、上場計画の策定をする必要もあります。

アイザワ証券ではJ-Adviser、主幹事証券としてそれらを踏まえた新規上場の支援をしておりますので、TPMへの新規上場を検討していれば、一度ご相談ください。

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ライター

豊福 哲矢

アイザワ証券 CRM部

豊福 哲矢

2015年に日本アジア証券株式会社(現アイザワ証券株式会社)に入社後、営業経験を経て、公開引受部門に異動。上場準備支援業務等に従事し、アイザワ証券株式会社との合併後は、IPO、M&A、ストックオプション等といった企業の事業戦略サポートに取り組む。2024年にソリューション部はCRM部ソリューション課に組織変更。

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