NISA口座の相続はできる?相続方法や押さえておくべきポイントを解説
2024.11.13 (水)
NISA口座を保有している方が亡くなった場合の相続に必要な手続きそのものは、一般の口座と大きな差はありません。しかし、相続人の取得価額の計算方法など、異なる点がいくつかあります。今回は、NISA口座の相続方法や、相続にあたって押さえておくべきポイントを解説します。また、相続全般においてつまずきやすい注意点も知っておきましょう。
NISA口座はそのまま相続できない
NISA口座開設者が亡くなった場合、口座をそのまま相続することはできません。相続するには、相続人の口座に移管する手続きが必要です。手続きの流れや必要書類などを解説します。
手続き1|「非課税口座開設者死亡届出書」等の書類を提出
被相続人のNISA口座については、そのまま運用の継続や売却はできません。相続の手続きが必要になります。
提出する書類は被相続人が開設している口座の種類によって異なります。NISA口座の場合は「非課税口座開設者死亡届出書」を提出しなければなりません。速やかに被相続人の口座のある金融機関に連絡し、提出書類の送付を依頼しましょう。口座保有者の死亡を届け出る手続きの流れは、NISA口座でも通常の口座であっても大きく変わりません。
そのほかに口座開設者の死亡届出に必要な提出書類や添付書類の例は以下の通りです。金融機関や相続の方法(遺言書か法定相続かなど)によっても異なるため、金融機関に相談した上で、漏れがないように準備しましょう。
・被相続人が死亡した事実を確認できる戸籍謄本
・相続人の代表者が法定相続人であることを確認できる戸籍謄本
・相続人の印鑑登録証明書原本
・相続人の本人確認書類
・遺産分割協議書や遺言書、ない場合には被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等や法定相続情報一覧図、相続人全員の署名捺印をした相続手続依頼書と相続人全員の印鑑証明書(相続人が複数の場合)
手続き2|「相続上場株式等移管依頼書」を提出
被相続人がNISA口座で保有していた株式や投資信託を相続人の口座に移す際には、金融機関に「相続上場株式等移管依頼書」を提出します。
移管手続きを行うには、被相続人の口座がある金融機関で、相続人名義の取引口座を開設する必要があります。被相続人の保有株式等は相続人の特定口座または一般口座で受け入れる形式となります。
相続後に発生する確定申告などの手続きを考慮すると、源泉徴収なしの特定口座や一般口座よりも、源泉徴収ありの特定口座でまとめて受け入れたほうが楽でしょう。源泉徴収ありの特定口座の場合、支払調書の作成から納税までを証券会社が行います。
NISA口座の相続で押さえておきたいポイント
NISA口座で保有している銘柄は、相続開始日を境に課税扱いとなります。ここでの相続開始日は被相続人の死亡日を示します。相続にあたって押さえておきたいポイントや注意点を紹介します。
ポイント1|NISAの資産はNISA口座へ移管できない
故人が株式や投資信託を所有していた場合、相続開始日の時点で非課税措置の適用がなくなります。相続開始日以降に受け取る配当金や分配金は、すべて課税されます。
たとえ相続人がNISA口座を開設していても、NISA口座での受け入れや非課税措置の適用はできません。特定口座もしくは一般口座での受け入れとなります。
ポイント2|相続開始時点までの含み益は非課税になる
相続開始日において含み益があった場合は、その利益は非課税となります。しかし、相続開始後は課税商品となるため、以降の利益については課税されます。
ポイント3|死亡日以降に発生した配当金・分配金は課税対象になる
相続開始時点の含み益は、相続を開始しても非課税です。しかし、相続開始後に受け取る配当金や分配金については相続人の所得となり、所得税・住民税の課税対象となります。
ポイント4|引継時の取得価額は相続発生時の時価で決まる
通常の場合、相続においては株式などの取得日や取得価額は被相続人が取得した際の価額が引き継がれます。しかし、NISA口座から受け入れる株式等の取得日は相続開始日になり、取得価額は相続開始日の時価になります。
上場株式等の相続税評価額の計算方法
上場株式等の相続税評価額は、下記の4つの金額から最も低い金額を選択できます。相続税評価額の計算方法は、課税口座もNISA口座も同じです。
・相続開始日の終値
・相続開始日の月の終値の平均額
・相続開始日の前月の終値の平均額
・相続開始日の前々月の終値の平均額
相続手続きでつまずかないために
遺産を相続するには、NISA口座に限らずさまざまな手続きが必要です。相続手続きでつまずきがちな点について把握しておきましょう。
つまずく点1|平日に手続きする時間を取らなければならない
死後の手続きや相続手続きを相続人本人が行う場合、戸籍等の請求をしたり、手続きに必要な書類を提出したりする必要があります。そのために役所や金融機関、法務局などに出向かなければなりません。
金融機関の多くの窓口は15時、役所や法務局の窓口は17時15分で閉まります。被相続人が亡くなって日付の浅い段階で、仕事や家事、育児の合間を縫って足を運ぶことに難しさを感じる方も多くいます。
つまずく点2|書類に不備があり、何度もやり取りが発生する
相続手続きにあたっては相続の状況によって、戸籍謄本や遺産分割協議書、遺言書などのさまざまな書類を提出しなければなりません。特に戸籍については、すべての戸籍をそろえて提出したと思っても、あとから不足分を指摘されるケースも少なくありません。
また、印鑑登録証明書(印鑑証明書)には有効期限を設定している提出先も多く、期限切れとなり再提出が必要になるケースもあります。
このように、書類の提出ミスによって、何度も金融機関などとやり取りしなくてはならないことに疲弊する方もいます。
つまずく点3|相続人の間で不和が生じる
相続手続きは、遺言書がある場合以外、相続人全員で手続きを行うのが原則です。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書を作成することがおすすめです。
ただ、相続に関して知識のない方だけで協議を進めようとすると、分け方についての意見が対立してしまうこともあります。そうなると、手続きが中断してしまったり、不信感から相続人同士の争いに発展してしまったりすることも考えられます。
つまずく点4|イレギュラーな対応が生じやすい
相続をめぐる事情はさまざまなため、下記のようなイレギュラーが発生することもあると念頭に置いておくことが重要です。
・存在しないと思っていた相続人があとから現れる
・相続人のなかに連絡のつかない人がいる
・相続人に認知症の方がいる など
このような場合、基本的な相続の仕組みしか記載されていない書籍やWebサイトでは対応方法を知ることはできません。そのため、相続人だけで手続きを進めようとすると、必要な手続きが漏れてしまったり、余計な時間を要してしまったりすることもあります。
まとめ
NISA口座は非課税のまま相続することはできません。相続開始日で非課税措置は終了し、相続人が課税口座で引き継ぐことになります。
被相続人がNISAで保有していた株式等は、相続人の特定口座もしくは一般口座で受け入れます。相続人は被相続人と同じ金融機関に口座を開設し、速やかに金融機関に連絡して手続きについて相談しましょう。
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