ベトナム現地情報2023年1月号より 企業紹介 モバイル・ワールド・インベストメント
2023.01.18 (水)
モバイル・ワールド・インベストメント(MWG:Y5388)
モバイル・ワールド・インベストメント 株価推移(2014年7月~2022年7月)
モバイル・ワールド・インベストメント(以下「モバイル・ワールド」といいます)は 、国内有数の小売企業グループです。2004年に設立され、主に家電・携帯販売を手掛ける「Thegioididong.com」「Dienmayxanh.com(DMX)」、Apple製品の正規販売店の「TOPZONE」、スーパーマーケットの「Bach hoa XANH」、薬局チェーンの「An Khang 薬局」を展開しており、売上の約8割を家電事業が担っています。家電小売事業では、海外への出店を進めており、カンボジアに続いて、2022年にはインドネシアへの進出を果たしました。
2022年第3四半期の売上高は、前年同期比32%増の32兆120億ドン、純利益は同15%増の9,068億ドンとなりました。1~9月期に関しては、家電事業は既存店売上高が伸び、新規店舗が業績に貢献しました。小型店の出店に注力しており、DMXの総店舗数に占める小型店舗の割合はここ一年で34%から45%に増加しました。
スーパーマーケット事業は、コロナ下の買い込み需要の反動とローカル市場の営業復活で、生鮮食品の売上が前年同期と比べておよそ30%落ち込みましたが、コロナ前の水準を上回ってきています。
基本データ(2022年12月末時点)
売上高構成比(2022年1~9月期)
売上高・純利益
ちょっと深掘り☞ 「Bach hoa XANH」の再編
モバイル・ワールドは、2022年第2四半期と第3四半期にスーパーマーケット事業(Bach hoa XANH)の大規模な再編を行いました。
同社は2015年末から南部を中心に積極的な出店を進めてきました。その結果、2016年に2,500億ドンだったスーパー事業の売上高は、2021年には28兆2,000億ドンにまで成長しました。
しかし黒字化には至っておらず、スーパー事業の黒字化を目指し、およそ400店舗の規格外店舗や不採算店舗を閉店させました。それにより、足元では1店舗当たりの来店客数、平均売上高が増加しており、少しずつ効果が現れていると考えられます。
小売店の再編では、以前マサングループがビングループから買収した小売事業(WinMart、WinMart+)の不採算店舗を整理した前例があります。マサングループの時は再編後に利益率が改善され、その後の新規出店に弾みをつけることができました。「Bach hoa XANH」も良い前例に続くことができるかが注目されています。
ちょっと深掘り☞ 新規参入と外資規制(ENT)
FPTデジタル・リテール、モバイル・ワールドのように、企業の異業種への新規参入はベトナムでよく見かける光景です。
例えば、不動産業で有名なノバランドグループはスーパーマーケットや食品事業を経営、鉄鋼会社のホアファットグループも一見何の関係もない養鶏業を営んでいます。
小売・食品で有名なマサングループは、鉱山採掘でレアメタルの一種であるタングステンを手掛けています。昨年には英国のバッテリー開発企業に出資し、さらなる事業拡張を行っています。
中でも最な例はビングループです。不動産業をメインにショッピングモールから電気自動車まで幅広い事業を手掛けています。
ENTの恩恵と今後
成長中の国内市場では、国内企業が新たな可能性を求めて、事業を拡大しています。外資企業も考えは同じで、数多くのプレイヤーが参入してきています。
ベトナムの小売市場について言えば、伝統的な家族経営の零細商店が多く存在しますが、そのような商店が外資の大型小売チェーンに太刀打ちするのは難しいと考えられています。そこで2007年にベトナムはWTOに加盟する際、競争力の弱い国内勢を守るために、外国企業の出店に関する規制を設けました。この外資規制であるENT(Economic Needs Test)は、これまで国内企業に有利に働いてきました。しかしグローバル化が進む中で、ベトナムが結んだ環太平洋経済連携協定(TPP)により、この外資規制は2024年に撤廃される可能性があります。
ベトナムは新型コロナ下で伝統的な小売から近代的な小売への歩みを進めてきています。モバイル・ワールドのように海外進出する企業も出てきており、グローバル化の中でひとり立ちできるかどうかが注目されるところです。
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