コリアインサイト 伸びる韓国医薬品会社、政策金利引下げは追い風
2024.11.29 (金)
2024年10月、韓国銀行は政策金利を3.50%から3.25%に引き下げました。政策金利の引き上げを開始した2021年8月以来、3年2ヶ月ぶりに引き下げが続きました。今回の利下げの恩恵を受けたと考えられる産業の1つが医薬品業界であるとも言えるでしょう。
医薬品業界は大規模の試験研究費が必要で、そのために金融機関からの融資や投資を受けます。どのような資金調達方法であっても、資金調達コストを抑えるためには政策金利は重要です。
韓国銀行の政策金利引下げは想定内でした。韓国のインフレ率はすでに安定された状況であったため、米FRBが金利引下げを行うと韓国銀行も同様に引き下げると十分に予想できます。金利引下げに対する期待感は今年7月から医薬品株に反映され始めました。韓国の製薬会社で構成された指数であるKRXバイオTOP10指数は、7月1日の3,251ポイントから10月21日の4,184ポイントまで約30%上昇し、医薬品株に対する期待感を示しました。
医薬品銘柄が上昇した理由は他にもあります。半導体、電池、自動車産業は米大統領選による不安と業績不振で株価は横ばいの状況でした。そのような状況下で、医薬品産業だけはその懸念から離れていたことから相対的に注目されました。注目されている医薬品業界のなかでも目立つ銘柄が2つ、「サムスンバイオロジックス」と「Alteogen Inc(アルテオジェン)」です。
サムスンバイオロジックス(韓国:207940)
サムスンバイオロジックスは2011年に設立されたサムスン電子のグループ企業です。
サムスン元会長、李健熙(イ・ゴンヒ)氏が半導体事業以後の未来のために設立した会社で、医薬品開発製造受託機関 (CDMO)を担当する会社です。
※CDMO:Contract Development and Manufacturing Organization
CDMOとは、製造施設や設備を保有し、他社から医薬品を製造する業務や技術を開発する業務を請け負っている機関を指します。
サムスンバイオロジックスの事業は大きく2事業に分類されます。一つが医薬品を委託生産するCMO事業、もう一方が細胞株開発から初期臨床まで開発サービスを提供するCDO事業です。主な事業はCMO事業で売上高の90%を占めています。
※細胞株:一定の形質を維持しながら無限に増殖する細胞。
同社のCMO事業は、商業用生産設備60万リットル、臨床用生産設備0.4万リットルで合計60.4万リットルの生産能力を備え、世界最大規模の生産能力を持っています。来年4月の完成を目標に18万リットル規模の工場を増設しており、2032年まで次第に工場を立て続けて、最終的には生産能力が132.4万リットルまで達する予定です。主な顧客はジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、モダナなどビッグファーマと呼ばれるグローバル製薬大手です。
売上高と純利益も着実に増加しました。2021年決算上の売上高は1.5兆ウォン、純利益は約0.4兆ウォンでしたが、2024年の予想売上高は4.5兆ウォン、純利益は1兆ウォンで売上高は3倍、純利益は2.5倍に成長する予想です。 株価も米FRBの政策金利の引き下げに伴い、7月1日から11月12日まで38%上昇しています。
Alteogen Inc(アルテオジェン)
アルテオジェンは2014年KOSDAQ市場に上場した企業です。アルテオジェンは今年初めから人ヒト組換えヒアルロニダーゼ(ALT-B4)という新薬によって投資家の注目を集めました。ALT-B4はアルテオジェン独自の技術で、皮膚の真皮に通路を作り、大量の抗体医薬品を皮下注射で投与することができます。従来の方法である静脈注射に比べ、時間を短縮することができます。
簡単に言えば、抗がん剤治療を受ける患者に注射を打つ時間が劇的に短縮されます。4~5時間かけて投与しなければならない抗がん剤を5~10分で打てるようになります。また、近所の病院で簡単に打つことができる点もメリットです。
アルテオジェンはALT-B4を基に売り上げが急増しました。過去5年間200億~500億ウォンの売り上げを記録しましたが、来年に1,280億ウォン、再来年には3,800億ウォンに伸びると予想されます。営業利益も黒字に転換し、来年に520億ウォン、再来年には2,890億ウォンになると予想されます。株価も連動して、今年の2月1日から11月13日までの株価は約6倍弱上昇しました。
バリュエーションの観点から見ると、11月12日現在のサムスンバイオロジクスの予想PER(株価収益率)は69.1、PBR(株価純資産倍率)は6.8です。アルテオジェンは今まで赤字だったのでPERは判断手段にはなりません。また、PBRについては125です。一般的な企業のPERは10、PBRは1だということを考えると、かなり割高感があるのは間違いありません。しかし、両社の高い成長率を考えると納得できない数値でもないと思われます。
※アルテオジェンはアイザワ証券では取扱っておりません。
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