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東京メトロが上場した理由は?

2024.10.29 (火)

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

東京メトロが上場した理由は?

2024年10月23日に東京地下鉄(東京メトロ)が東証プライム市場へ上場しました。公開価格1200円に対し、初値は1630円。その後も上昇し時価総額が1兆円を上回るなど、滑り出しは好調です。

同日の売買代金ランキングでは東京メトロがぶっちぎりの1位となり、ほかの銘柄と大きく差を付けました。もともと市場での注目度が高かった案件ですが、思った以上に人気だったことが分かります。IPOに当選した人、初値で買った人は総じて利益が出ており、株式市場の盛り上げに一役買ったと言えるかもしれません。

上場初日は10時過ぎに寄り付いた後も上昇し、そのまま高値圏で推移

出所:トレーダーズ・ウェブ

それはそれとして、東京メトロの株式を売り出したのは政府と東京都です。東京メトロほどの大企業がなぜ今になって上場したのでしょうか。今回はそのことについて調べていきたいと思います。

東京メトロとは?

東京メトロの前身は1941年7月に特殊法人として設立された帝都高速度交通営団(営団地下鉄)です。東洋初の地下鉄路線(銀座線の浅草~上野間)を開業した東京地下鉄道や東京高速鉄道(銀座線の新橋~渋谷間)などから地下鉄道の免許線を譲り受け、同年9月に営業を開始しました。その後、2000年代に入って小泉政権下で進められた特殊法人改革の一環として民営化されることになり、2004年4月に株式会社化され現在に至ります。

9路線(銀座線・丸ノ内線・日比谷線・東西線・千代田線・有楽町線・半蔵門線・南北線・副都心線)からなる運輸業だけでなく、路線沿線のオフィスビルやホテルといった不動産事業、商業施設「Echika」などを運営する流通・広告事業などを展開しています。ほかの鉄道各社と似たような事業構造ですね

今回上場した理由

今回、東京メトロが上場した主な理由は政府と東京都が資金調達を行うためです。ちなみに、政府は東京メトロ株の売却益を東日本大震災復興債の償還費用に充てるとのこと。報道によれば東京都はインフラ整備に充てる案などが浮上しているようです。

上場前の時点で、東京メトロ株は政府が53.4%、東京都が46.6%を保有していました。上場に伴い国が26.7%、東京都が23.3%の合計50%を売り出したため、まだ残り半分は政府と東京都が保有していることになります。
公開価格1200円に株式50%分(2億9050万株)をかけると、その額はなんと3486億円!。証券会社に手数料を支払う必要があるので政府と都が受け取る金額は前述の金額ではありませんが、3000億円以上の資金調達が実現したことになります。国レベルの資金調達は規模が違いますね。

ちなみに、政府が保有する株式の一例は以下の表になります。令和4年度末現在なので、東京メトロはまだ上場していません。ここでは1000億円以上のみを掲載しているので、これら以外にもまだあります。この時点で政府保有株式は合計34.4兆円とのことでした。

東京メトロのIPOが人気だった理由

まず知名度が抜群であるということが言えます。日本人であれば知らない人はほとんどいないでしょうし、まず潰れない会社という安心感があります。それに、配当利回りがほかの鉄道株よりも高めであり、上場前から株主優待を導入することが伝わっていました。

これらのように、知名度、安定性、好配当、株主優待と投資家が望む欲張りセットのような好条件がそろっていたため、凄まじい人気になったと考えられます。表面上ではこのような感じですが、人気化させなければならない理由もあったと言われています。
今回の売り出し人は政府と東京都であり、証券会社としても失敗は許されない案件でした。公募による売り出しは事前の需要調査(ブックビルディング)が行われます。ここで思ったような需要がない場合、売り出し価格を引き下げて需要に一致させる必要があります。
売り出し価格が低いと調達資金も少なくなるため、政府と東京都の期待を裏切るわけにはいかない証券会社としては、何が何でも成功させる必要があった・・・といったうわさ話があったりします。本当のことは関係者しかわかりませんが、2015年の郵政グループ3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)のIPOも相当な人気があり、初年度から配当利回りが高かった記憶があります。

まだ政府と東京都が50%の株式を保有しており、将来的には追加の売り出しがある可能性もゼロではありません。実際に日本郵政は2021年に2回目の売り出しが実施されました。上場したばかりで追加売り出しの話をしても仕方ありませんが、上場したからには利益を求めなければならず、株主から厳しい要求をされることもあるでしょう。今後、どのような事業展開と成長を遂げていくのか要注目です。

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

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ライター

畑尾 悟

日本株情報部 アナリスト

畑尾 悟

2014年に国内証券会社へ入社後、リテール営業部に在籍。個人顧客向けにコンサルティング営業に携わり、国内証券会社を経て2020年に入社。「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別銘柄を中心としたニュース配信を担当。 AFP、IFTA国際検定テクニカルアナリスト(CMTA)

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