China Market Eye 中国のETFブーム
2024.12.02 (月)
中国のETFブーム
中国株式市場では、ETF(上場投資信託)に大規模な資金流入が続いています。国内統計によると、11月15日の時点で中国市場全体のETFは1,000本を超え、その純資産は3.67兆元(約77兆円)とそれぞれ10年前(2014年)のおよそ10倍と20倍になりました。そのうち純資産が100億元、200億元、300億元、1000億元を超えたETFはそれぞれ60本、33本、17本、8本とETFの大型化も進んでいます。また、その80%以上はCSI300指数や上海50指数など主要株価指数に連動する株式型ETFです。つまりETFを通じた新規資金流入は9月以来の本土株上昇をもたらす要因とも推察されます。
中国のETF(上場投資信託)の純資産と本数の推移
新規投信募集金額は10年振りの高水準
中国本土株は11月にかけて調整気味となったにも拘らず、11月26日の時点で11月に新規設定した投資信託は77本で1,345億元を募集し、そのうちETFを中心とした株式型投信が全体の7割強を占める約1,000億元と月間として10年振りの高水準となりました。ETFに人気が集まった結果、ETF純資産は11月で初めてアクティブ型株式型投信の純資産を超えるようになりました。
上海市内で行われた投資信託大手の投資家向けETF新商品説明会
パッシブ投資は幅広く浸透し、重要な投資手段として定着しつつある
ETF投資が中国で人気を集めた背景として以下のことが考えられます。まず、当局は利下げや財政出動、債務再編など多くの措置を講じるなどデフレ退治を本格化させており、低迷した市場センチメントはリスクオンに転換しつつあります。1年定期預金の金利が1.1%程度と上海50指数の配当利回り(約3.3%)を大きく下回る状況の下で投資家は株式の「持たざるリスク」を意識し始めています。
次に、当局は今年4月に資本市場を活性化するための「新9条」を公表し、ETFの新設・募集を迅速に承認するなどインデックス投資を促進する市場環境を整えました。その結果、個人投資家のみならず、保険や年金など機関投資家もETFを利用した投資比率を高めてきました。
そして、本土市場では過去3年間、90%以上のアクティブ型株式ファンドの運用成績はCSI300指数及び上海総合指数に勝てなかったことが調査で分かりました。これを受けて、投資家は透明性が高く投資コストも安いインデックス投資(ETF)に目を向けるようになっています。
最後に、投信会社はテクノロジー企業や新技術、高配当などに焦点を合わした多彩なETF商品を開発しているほか、個人投資家は銀行窓口だけでなく広く普及している金融アプリ「アリペイ」や「Wechat」でも気軽に購入でき、ETFを通じてホットなテーマ投資に参加できるようになりました。例えば中国大手投信会社の華夏基金では各業界や投資テーマをカバーする88本の株式型ETF投信(純資産は約5,000億元)を開発・販売しています。
中国本土市場は長らく個人投資家が主導する投機市場と言われてきました。最近のETFブームは個人投資家の投資理念が大きく変化したというのはまだ早すぎるかもしれませんが、EFT投資は幅広く浸透しており、個人投資家にとって重要な投資手段となったといえます。米国や日本など先進国ではインデックスに連動するパッシブ投資は既に主流として定着しているように、中国でも今後成熟化していくことが期待されます。
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