株式放談 バリュー株かグロース株か
2022.01.31 (月)
株は美人投票?
ケインズ経済学で有名なジョン・M・ケインズという人は投資家としても優秀な人で、株式投資について有名な「株は美人投票」という格言を残しています。(昔の格言なので表現の適切性は悪しからず)
これは単に上昇する株に投資したかったら「美人投票しましょう」ということではありません。ある女性を美人だと思うのは人それぞれの価値観であって、必ずしも「私が美人だ」と思う人をほかの人が美人だと認定してくれるとは限りません。これは「他の多くの人が美人だと認定するであろう人に投票できれば、株式投資に成功しますよ」という意味です。
一方、米国株式投資の古典的バイブルと言われる「証券分析」の著者であるベンジャミン・グレアムは、株式市場は中期的に見れば「美人投票」の場所ではなく「価値を測定する」場所であると言っています。
本質的にどの企業の株価も、今後生み出されるキャッシュ・フローの割引現在価値(将来得られる価値を現在評価に直したもの)の合計以上でも以下でもないということです。
方向感欠く株式市場
米国株式市場において、昨年末までは「来年の相場(今年の相場)はテーパリング、利上げをしても強いでしょう」という意見が大勢を占めていました。しかし、年が明けてふたを開けてみると「インフレにより利上げが加速することで株式相場はお先真っ暗」という意見がだいぶ増えてきました。
特にナスダック市場に上場しているようなハイテク・半導体株に対しての風当たりが強く、先行きに対しての弱気意見が増えているように感じます。ここまで期待感が強く相場の主力として買われていた反動も大きいと思いますが、一般論として金利上昇に弱いとされるグロース銘柄がハイテク・半導体株に多いという印象が強いからだと思います。
一方でバリュー株に対する期待感は上昇しており、アフターコロナによって業績が回復する可能性が高いサービス業などにも注目が集まっています。また、金利上昇期待で金融株なども各シンクタンクの投資レーティングが引き上げられている印象です。
しかし、最近の株式市場急落の内容を確認するとバリュー株もグロース株も関係なく、株式市場が調整するときは「全部調整」しています。金利上昇のタイミングでの株式投資は、グロース株投資をすべきか、はたまたバリュー株投資に徹するべきかという議論が巻き起こりますが、今後の展開はどうなるのでしょうか?株式市場調整のタイミングでバリュー株とグロース株、どちらに投資すべきなのでしょうか。
利上げと株式市場の関係
バリュー株の定義とはなにか?ということですが、一口で言えば割安株のことを指します。低PER、低PBRに放置されていて財務内容も良好で、配当利回りが高い銘柄ということになります。これはバリュー株の多くが、景気後退局面で悪影響を受ける景気敏感株が多いことが原因と考えられます。
一方、グロース株は景気に関係なくテクノロジー・イノベーションで業績を拡大させるので、一時的に景気回復局面では相対的なリターンが低下するイメージがあります。これが金利上昇局面ではグロース株は売りというロジックです。
そもそも過去の事例をたどると中期的には金利上昇局面で株式市場は下落していません。また、ここ15年間は金利の引き下げ局面においても株式市場は下落していません。
つまり中央銀行が金利操作することで株式市場のコントロールをすることは出来ません。むしろその逆で株式市場や景気動向をみて金利操作をしているのです。今回も米国のCPIが7%と急激に上昇したことが金利を引き上げる要因です。このことから、グロース株を金利動向と結び付けて将来の変動予測をするのは本来ナンセンスなことだといえます。
バリュー株か?グロース株か?はたまた・・・
先述したように企業が今後生み出すキャッシュ・フローの割引現在価値であるならば、高配当が売りであるバリュー株であってもその源泉であるキャッシュ・フローを生み出すためには成長(グロース)しなければなりません。
グロース株というとハイテク株のように急激に成長する株ばかりを想像しがちですが、ディフェンシブ銘柄の中にも高財務内容で、ゆっくり確実に成長し、配当で還元している銘柄もあります。ハイテク株と合わせて、こういう株なども急落していれば、投資のチャンスといえます。
また、コロナ禍からの回復の恩恵に預かる銘柄なども投資のタイミングとしては良いと思いますが、まだ、アフターコロナの動向がはっきり読み切れないところもあります。
株式市場の急落場面は持ち株がある場合気持ちもふさぎがちですが、裏を返せば絶好の投資タイミングになる可能性もあります。実りの多い投資計画を立ててみてください。
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